はるちゃん探し
どれくらい泣き叫んでいたのか、誰も分からなかった。
泣き声も、怒鳴り声も、嗚咽も、しばらくのあいだ孤児院に響き続けていた。
ひかりは壁にもたれ、ぐったりと肩を落としていた。
翔も床に座り込んだまま、両手で顔を覆っている。
職員さんがそっと毛布をかけてくれても、二人は動けなかった。
やがて、ひかりの震えが少しだけ弱まった頃。
翔が、低くかすれた声で言った。
「……ひかり」
ひかりは顔を上げられない。
けれど、その名を呼ぶ翔の声には、先ほどのぐちゃぐちゃな感情とは違う何かが宿っている。
「……俺ら、行こう。東京に」
ひかりの肩がびくっと動いた。
「……なんで……?」
「なんでって……遥香のことだよ」
顔を上げた翔の目は真っ赤だった。
泣いたあと特有の腫れ方をしているのに、涙はもう止まっていた。
「事故? 自殺? そんなの……テレビの言うことだけで納得できるわけないだろ」
ひかりは唇を噛む。
翔はゆっくり、しかしはっきり続ける。
「……俺ら、家族だろ。遥香がどうして死んだのか、誰のせいで死んだのか、俺らが確かめるんだよ」
「翔……」
ひかりは泣き疲れた顔で、ぎゅっと拳を握った。
「私、行く。はるちゃんのこと……このまま知らないままなんて、絶対いや」
「なら決まりだ」
翔は立ち上がろうとし、膝が一瞬ガクッと崩れた。
それでも意地で立ち上がる。
その姿は、強がりで、無理していて、ボロボロだった。
けれど同時に、ひかりにとっては唯一の支えでもあった。
「はるちゃんがいない世界なんて、おかしいよ……」
ひかりの小さな声。
翔は一瞬だけ目を閉じ、そして静かに言う。
「だから行くんだよ。遥香を死に追いやったやつを見つけて復讐する」
新年の朝。
孤児院に差す光だけが、やけに冷たく感じた。
その光の中で、ひかりと翔は壊れたまま立ち上がった。
遥香の死の真実を追うため──東京へ向かうために。




