ゲリラライブ
数日後。
大阪に朝早く集合したメンバーたちは、ゲリラライブに向けてリハーサルを行なっていた。
「昼過ぎから本番だって! みんな息合わせていこう!」
「まかせて! 絶対完璧に決めるで!」
「和樹〜。俺が間違ったらフォローしてな〜」
3人は気持ちの昂りを抑えることなく練習にぶつけていた。
翔とひかりは少し離れて見守りつつ、メンバーの元気にほっとする。
リハーサルは朝からみっちり。曲の確認、振りの最終調整、呼吸や表情の練習。みんなで声を出して、時には笑いながら、でも集中して進める。
昼頃になると、いよいよ本番。道頓堀の両脇には予想以上の人だかりができていた。ゲリラライブという事だが、盛り上がりに欠けるわけにはいかない。
黒田の提案で1時間前からゲリラライブの緊急告知を行なったのだ。
それでこの人だかりなのだから、この数ヶ月でかなり知名度が上がったことがわかる。
「うわ、こんなに人いてるじゃんか!」
「これぞ大阪やな〜!」
メンバーは会話をしながらも、緊張した表情を浮かべている。
(こういう時はあれだよね)
ひかりはみんなを手招きすると円陣を組んだ。そして、総司に掛け声をお願いする。
総司は気持ちの昂りをぶつけるかのように息を吸い声をだした。
「今までの気持ちぶつけていきましょう! ルーセント! レッツー」
「「「「Go!!」」」」
みんなで声を出すと、スタッフに船の上に出るように声をかけられる。みんなは気合の入った表情で船上に上がった。
船の上でイントロが流れる。キラキラ衣装に身を包んだ4人は手を振りながら両方の道に手を振り続ける。
船の上でデビュー曲を歌い上げると、沿道の人たちも手拍子で応援。
ひかりはファンとルーセントの一体感のあるステージに圧倒される。
(すごい。これがファンとアーティストの熱気なんだ。)
メンバーのみんなはちぎれるくらい手を振りながらアピールを続ける。
3曲歌い終わった後、MCタイムに入った。
「はい! みんな、こんにちは〜! ボクたちの名前は…!」
「「「「ルーセントです!」」」」
メンバーはグループ名を発表後、順番にマイクを握り、自己紹介を始める。
「こんにちは! 僕は西大寺和樹です! 大阪出身、地元のみんなに会えてめっちゃ嬉しいです!」
和樹の声に、沿道からは「わ〜!」と歓声が上がる。和樹は嬉しそうに両手をあげて、ジャンプをしながらめいいっぱい笑顔をとどける。
「橿原遼太郎です〜! みんな大好きやで〜! まだまだ楽しませるから一緒に楽しんでください〜!」
爽やかに手を振る遼太郎の姿に、ひかりは自然と笑顔になる。
「八木総司です。今日のライブ、みんなと一緒に最高の思い出作ります!」
総司の真剣で強い目力に、見ている人たちの視線も釘付けになる。ニカっと笑う際に見える白い歯は力強さも感じて好感度が高い。
「田原本翔です。これからもよろしくお願いします。」
翔はめいいっぱいのアピールはせず、クールに手を振った。美しい顔とそのクールさが相まってミステリアスな雰囲気。
どことなく冷たい感じが女子たちにグサグサと刺さる。
「来月の15日にメジャーデビューします! よろしくお願いしますー!」
手を振り、船の上から沿道の人々に笑顔を向けるメンバー。歓声がさらに大きくなる。
翔は歓声を浴びて身が震えるような感覚になった。
これまで遥香のために頑張ってきたけれど、今、目の前でファンが喜んでくれる姿を見て、胸の奥から熱い感情が湧き上がる。
(俺でも誰かを元気付けることができるんだな。)
一生の仕事だと思ったことはなかった翔だが、初めて続けたいと思った瞬間だった。
ライブを終えたメンバーは、汗をかきながらも満面の笑みで口々に言う。
「楽しかったなぁ〜!!」
「めっちゃ盛り上がったやん!」
「やっと、大阪のみんなに会えたな!」
「今日、頑張ってよかった」
笑い声が船の上に弾ける。手を取り合い、肩を叩き合い、みんなの顔がキラキラ輝いていた。
ひかりはその様子を少し離れて見守る。翔の目が、心の奥から輝いているのを感じ、自然と笑みがこぼれる。
翔は今まで遥香のために動いていたけれど、目の前のファンを見てなにか違うものを手に入れた、ひかりにはそんな感じがしたのだ。
終わった後、メンバーたちは口々に喜びを語りながら興奮が冷めやまぬ様子。
盛り上がる気持ちを抑えることなく夜はみんなで大阪を満喫。
たこ焼き、串カツ、お好み焼き、街を歩きながら笑い声が絶えない。
そして、ゲリラライブがうまくいった自信と達成感を元にデビューライブまで頑張ろうと誓い合う。
ひかりはその様子を見て心から思った。
このメンバーで良かったと。




