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光は、約束を残して消えた──人気アイドルの死の真相を追う幼なじみの話  作者: みかん


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カギ

心の中のモヤモヤしていた部分を話し合い、少し和やかな雰囲気になった室内。


 ふと、翔の視線がテーブルの上に落ちた。


 そこには、さくらから渡された封筒と鍵が置かれている。


 ひかりもそれに気づき、手を伸ばした。


 指先に触れた瞬間、昼間の張り詰めた空気が蘇る。


 ひかりは鍵を持ち上げ、まじまじと見つめた。


 銀色のプレートには、小さな文字が刻まれている。


 


 民宿旅館 花里 204


 


「……花里?」


 翔が眉を寄せる。


「聞いたことある?」


「いや……ない」


 


 ひかりはすぐにスマホを手に取り、検索画面を開いた。指が少しだけ震えている。


 


 二人で画面を覗き込んで探すが、検索結果はゼロ。ひかりはスマホを口元に置きながら眉をひそめる。


 


「んー。出てこない……」


「潰れた旅館、とか?」


「それにしても、何も出ないのは変じゃない?」


 


 もう一度、表記を変えて検索する。


 花里 民宿

 旅館 花里

 Hanazato


 


 それでも、何も引っかからない。


  部屋に、静かな違和感だけが広がっていく。


 


「……なにこれ」



 翔がぽつりと呟いた。


 


 ひかりは遥香の手紙が入っていた封筒から便箋を取り出す。そのとき、ふと違和感に気づいた。


 


「……あれ?」


 


 便箋の端。小さなペンギンのイラストが描かれている。シンプルで、どこか古いデザイン。


 


「こんなの、さっきあった?」


「いや……気づかなかった」


 


 ひかりはすぐにスマホのカメラを向け、画像検索をかける。


 


 該当なし。


 


 もう一度角度を変えて撮る。拡大もしてみる。


 

 それでも出てこない。


 はぁぁー。とひかりのため息がその場に響く。


 翔も自らのスマホで調べるが何も出てこない。

 


 ひかりはもう一度、手紙に目を落とした。


 


 


光はすぐ近くにあるよ

のんびりやさんの翔は

真の力がまだ身を結んでないだけ

実がなるのはもうすぐ

危ないことはしないように

険悪にならないようにね


 


(光の真実は危険)


 


 ひかりの胸の奥がざわつく。縦読みをすればするほど自分に向けられた話ではないかと感くぐってしまう。


 


(やっぱり……私のこと?)


 


 さっきは勢いで飲み込んだ不安が、じわじわと形を持ちはじめる。


 


 もし本当にそうなら、遥香は何を知っていたのか。


 そして。


 自分は、何を知らないのか。


 


 ひかりの視線が、ゆっくり落ちる。


 


「……私さ」


 


 声が、少しだけ弱かった。


 


「怖くなってきた」


 


 強がる余裕もない、小さな本音だった。まだ18歳。心が真実を拒絶しているのがわかる。


 


「もしこれが、本当に私のことだったら……どうしよう」


 


 自分の知らない過去。触れてはいけない真実。

 そんなものがある気がして。

 


 不安で声が震えた次の瞬間。ぐっと、身体が引き寄せられた。


 


「……翔?」


 


 翔は何も言わず、ひかりを抱きしめていた。強くもなく、弱くもない。ただ、ここにいると伝えるような抱きしめ方だった。


 


「考えすぎるな」


 


 低く、落ち着いた声。


 


「真実がなんだろうと、ひかりはひかり」


 


 ひかりの肩が、わずかに震える。


 


「過去がどうでも、何を背負ってても……」


 


 翔は一度だけ言葉を切り、少しだけ力を込めた。


 


「俺が隣にいることは、変わらない」


 


 胸の奥に、じんわり熱が広がる。


 


「もし危険なら」


 


 翔は静かに続けた。


 


「一人で向かうな。半分、俺が背負う」


 


 ひかりの視界が滲む。


 


「家族だろ?」


 


 その一言で、張り詰めていたものがふっと緩んだ。ひかりは翔の服をぎゅっと掴む。


 


「……うん」


 


 小さく頷く。


 


 怖さは消えていない。


 でも。


 一人じゃないと思えた瞬間、恐怖はちゃんと立っていられる程度の重さに変わった。


 


「ありがと、翔」


 


 翔は答えず、ただ静かに頭に手を置いた。


 


 テーブルの上では、銀色の鍵がわずかに光を反射している。


 


 まるで、まだ開けてはいけない扉の存在を、静かに主張するように。


コスモスのうどんが美味しすぎてビビるのでぜひ食べてみてください。

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