夜の話し合い
その夜。
部屋に戻ったひかりと翔は、ベッドに腰掛けたまま、しばらく無言だった。
ひかりは今日の出来事が頭の中でぐるぐる回り、何度もシーンが蘇る。
翔もまた、部屋に漂う空気を吸い込み、気持ちを落ち着けようとしていた。
しばらくたったのち、沈黙を破るように、翔がゆっくり口を開く。
「……俺と遥香のこと知ってたんだな」
翔の質問に、ひかりは言葉を選ぶように小さく頷く。
「知ってた。でもね」
ひかりは少し間を置き、はっきりと自分の言葉を紡ぐ。
「初めて先生から聞いた時もそうだったけど、今も血が繋がってるとか、繋がってないとか正直どうでもいいの。大事な家族は、自分で決めるってあの時決めたから」
ひかりは強い眼差しで翔を見つめた。
そして、その言葉を聞き、翔の胸は少し熱くなる。
ひかりのまっすぐな眼差しには迷いがなく、ただ純粋に心からの言葉を発していると伝わる。
「だから、もう、気にしないで。血が繋がってなくても、遥香と翔はずっと私の家族だよ。だから翔、これからも私の家族でいてね」
ひかりは翔の心の奥に言葉を染み込ませるように、真っ直ぐに彼に伝える。
クールな顔に涙を浮かべてる翔。普段あまり泣かない翔の涙にひかりは思いが通じたと安堵した。
「あ! それと、これからは嘘も秘密もなしだよ。私、翔が一人で動いてる時、すごく不安だったんだから! いつもと様子違うし!」
少し怒ったように眉をひそめ、びしっと指を立てるひかり。
翔はその真剣さに、涙を拭い少し笑った。
「あのね! 美空さんの件、勝手に動いたのは許してないんだから! 二人で真実を掴もうって言ってたのに!」
ぷくっと頬を膨らませ、ぽこぽこと軽く翔の胸を叩く。
その小さな力加減が、ひかりの感情の強さを裏付けているようで、翔の胸は優しい痛みでいっぱいになる。
「痛い痛い! ごめんって!」
「ほんとにもう……」
翔は視線を少し逸らし、息を整えながら溢れるようにつぶやく。
「ひかりが大事だから。傷つけたくなかった」
その言葉に、ひかりは一瞬黙る。
胸の奥で大切にされてる嬉しさが膨らみ、同時に少しのもどかしさも感じる。
「私だって翔が大事だから、一人で抱えてほしくなかった!……カフェの話も、聞いてたんだから」
「……え?!」
翔が目を見開くと、ひかりは小悪魔のように微笑む。
「知らなかったの?」と挑発するように、少し意地悪な目を向けた。
「翔はね、私のこと舐めすぎだから! カフェの話聞いて、私に対しての態度の変化に予想はついたけど。本当に不安だったんだからね。でもまぁ、カフェの話はこっそり聞けてよかったよ。その話を聞いて計画練れたから」
はぁ、とため息をつくひかり。
翔は肩から力が抜けるのを感じた。全部ばれてたんだと胸の奥で苦笑いする。まさか、カフェにまできてただなんて、翔は全く気づいてなかったのだ。
「そういえば……計画を練ったって? あの女のこと、なんであんなに知ってた?」
翔の問いに、ひかりは少し悪戯っぽく笑う。
「実はね、黒田さんに相談したの。大事なところは伏せて。翔の母親が接触してきて、デビュー前に荒らされそうだって。そしたらさ……」
くすっと笑うひかりの横顔がいたずらっぽさを含む。
「黒田さん、すごいんだよ。弱み握れって、探偵紹介してくれたんだ」
翔は言葉を失う。まさか、探偵まで使いこなして裏で動いていたとは。
「調べたらね、もう、わんさか出てきたよ」
淡々と語るひかり。その声には楽しさと頼もしさが混じっている。
「翔と接触する前に、あの女を消すことも考えた。でも、それだと翔、ずっと母親と会って解決しようって頑張っちゃうでしょ? だから会わせてから、叩きのめしたの」
ひかりはにっこり笑う。翔はその笑顔を見つめながら、ほんの少しの恐怖を胸に抱いて苦笑いを浮かべた。
「……ひかりそんなんだったっけ?」
「ふふっ。元々だよ。あとね」
ひかりは胸を張る。
「私は守られるだけの存在じゃないって、証明したかったの。相手を攻撃することもできる、強い女なんだって!」
得意げな笑顔に、翔は息を吞む。守らなければいけないと思っていたひかりは、いつの間にか強く自立した人になっていた。
ずっと一緒にいてたはずなのに、気づかないうちにひかりはこの数ヶ月でめきめきと成長している。
(……ほんと、強くなったな)
翔は苦笑いを浮かべながら、ひかりの成長を静かに噛み締めのだった。
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おねげぇしますだぁー。




