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光は、約束を残して消えた──人気アイドルの死の真相を追う幼なじみの話  作者: みかん


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シェアハウスは明るさの塊

 家に戻ると、全員がリビングに集まってガヤガヤと賑やかにしていた。


 二人は靴を並べてリビングに入る。部屋の空気は二人の重さとは正反対に、やたらと明るく弾んでいた。





「翔おかえり! なあなあ、いい発表があるらしいぞ!」


「黒田さん早よ言うて!」





 ソファ周りに集まるメンバーたちは、早く早くと目を輝かせ、完全に落ち着きがない。



 その勢いに押されるように、ひかりと翔も作り笑顔で輪の中に入る。

 頭の中はまだ整理できていない。それでも今はマネージャーとアイドルとして振る舞わなければならなかった。


 ひかりは沈んだ気持ちを払拭するように首を左右に振る。翔も小さく息を吐き、心を落ち着けた。


 黒田はそんな二人の様子に気づかず、腕を組んで満足そうににやりと笑った。




「……落ち着いて聞けよ」




全員が一斉に口を閉じる……が、数秒ももたない。




「あー、俺この溜め方あかんねん〜。息詰まっちゃうわ〜」


「この溜め方、なんかええ事決まったやつちゃう?!」




 遼太郎と和樹が興奮してわちゃわちゃしながら言い合う。ひかりはいつものその様子を見て、自然と心がほどける。


黒田は二人をチラッと見て、にやりと笑った。




「デビューライブの前に、ひとつ仕掛ける」


「仕掛けるって何を?!」




 総司は目を輝かせて、ワクワクと息を飲む。




「なになん〜?! テレビ系ではないよな〜?」


 遼太郎は、むむむ、と考えるふりをして、


「ん〜と、まさか路上ちゃうか?!」


 和樹はパンと手を叩いて指を立てた。



 そんなみんなの様子に黒田はニヤリと笑い満足そうな表情を浮かべる。そして口を開いた。




「ふふふっ! 大阪ゲリラ決まったぞー!! っていうのは言ったよな?!」



一瞬の沈黙のあと、全員が一斉に反応する。


「大阪ぁぁぁ?! 俺聞いてへんねんけど!」


「関西や〜〜!! って俺は聞いてたけどね〜」


「地元じゃねえか、二人とも!! って俺は聞いてたけどな」



 和樹はみんな知ってたの?! と驚いた表情を浮かべる。みんなは和樹の方を見てこくりと頷いた。どうやら和樹は電話に出られず黒田からの報告を聞いていなかったらしい。


 ガーンと言いながら和樹はその場に項垂れた。ここまでの流れがネタのように完璧すぎて、ひかりはくすくす笑う。落ちそうな心をメンバーの明るさが救ってくれる。何も知らないはずの周りの人が、自分の心を支えてくてる。そんなこの場がひかりは心地よかった。



 和樹はそんなひかりの心情などは梅雨知らず、項垂れてた頭をあげてすぐに立ち直り、元気いっぱいに声を張はった。




「まぁええわ! 遼! 故郷の大阪頑張るで!!」


「まかせといて〜」




 二人の軽快な掛け合いに、リビング全体が一層賑やかになる。

 ひかりはその様子を見て、胸がじんわり温かくなるのを感じた。





「で、結局黒田さん発表って?」



総司が首を傾げると、黒田が白い歯を見せて嬉しそうに続ける。





「よし!ここからが新情報! 会場は道頓堀の船! 船に乗って、ゲリラライブ! 両脇の道が観客席だ!」



 黒田はがはがは笑いながら言う。メンバーはその言葉に目をキラキラさせる。



「船?! 観客は少数どこいった?!」

「めっちゃ目立つやん!」



 総司と和樹は嬉しさのあまり黒田とハイタッチ。興奮が冷めやらず、そのままグータッチに。



「通報されへん〜?」


 遼太郎が茶化すと、黒田はさらにガハハと豪快に笑う。


「通報は〜! されんギリギリを攻める!」


「攻めすぎだって!」

「最高やん〜!」


 一気にテンションが跳ね上がる。ひかりは思わず笑い、翔も肩を緩めた。




「関西で一気に認知取るぞ! 週末のトップニュースはお前らだ。それまで三日間、集中型レッスン組む! きついレッスンだが、その代わり当日はライブ後、自由時間わんさかあるぞ!」




「自由時間?!」

「ほんま?!」

「黒田さん今日優しない〜?」



 黒田は鼻で笑い、指パッチンを鳴らす。



「俺は飴と鞭の使い手だぞ。結果出したら決まってる」


「出す出す出す!!」

「やる気しかないな!!」


 そのやり取りを、ひかりと翔は少し距離を取って見ていた。

 さっきまでの重たい空気は嘘のように弾けている。その空気感が壊れそうな二人を支えていた。




「……すごいやる気と圧だな」



 翔が小声でつぶやくと、ひかりも微笑んだ。



「みんな、ファン獲得のためにすごい努力してたから、大きいステージ楽しみなんだよ」


 ひかりは自然と胸が温かくなるのを感じる。

 辛いことがあっても、このワンチームでいると心が軽くなる。みんなの明るいパワーは、不思議と自分の力にもなった。


 みんなが和気藹々としてると、和樹がふと思い出したように言った。




「ライブ終わったあとさ、母ちゃんの病院寄ろかな思ってんねん」


 ひかりはその時にこないだ遊びに行った時に聞いたことを思い出す。和樹の頑張る理由。その母親に会ってみたいと思っていると遼太郎が口を開く。



「俺も行くわ。久しぶりに遼太郎〜!って声聞きたいし」


 和樹がお見舞いに行きたいと言うと、遼太郎も即答で答えた。和樹は少し申し訳なさそうな表情を浮かべる。


「え、遼も来るん? 地元の友達とか会わんでええの?」


「俺は和樹が一番の親友やし、和樹のお母さんのことは本当のお母さんだと思ってるから。行っていいやろ?」


 和樹は少し迷ったが、遼太郎のお願いの仕草に、いつものひまわりのような笑顔が咲いた。


「遼来てくれるんやったら俺も嬉しい。母ちゃん喜ぶわ」


 ひかりはその幼馴染トークにほっこりして、心が軽くなるのを感じる。


 総司が前のめりに手を挙げた。


「俺も……行っていい?」


「え、総司?」


「俺、大人しくできるから! お願い!」


 総司は必死に目を見開き続けた。


「メンバーの家族に会ってみたい。俺、家族の距離感とか正直よく分からなくて……」



 一瞬、場が静まり返る。正直、総司の過去を知る者は少なく何かあるのかとみんな息を飲む。しかし、




「……芸の肥やしにしたい」




 そんななんとも素っ頓狂な理由に、遼太郎が吹き出した。


「総ちゃんそれ、和樹の家族研究対象やん〜」


「ちがうちがう! ちょっとアットホームな家庭覗いてみたくてさ!」


「理由!」


 和樹が笑いながら肩を叩く。


「まあええよ。母ちゃん、賑やかなの好きやし」


「まじで?!」


 総司の目が輝く。


「じゃあ決まりやな」


 3人は和気藹々な空気。そして、自然と視線がひかりと翔に向く。


「二人も来る?」


「私は行きたいけど、翔は……行く?」


 母親という微妙なキーワードを前に、ひかりは翔の意志を確認した。

 翔は考えを顔に出さず、ゆっくりと頷いた。


「行く」


こうして、大阪行きとゲリラライブ、そしてみんなでお見舞いが決まった。


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