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光は、約束を残して消えた──人気アイドルの死の真相を追う幼なじみの話  作者: みかん


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2/22

見つけてもらうために

 あの約束から十年。時間はあっという間に過ぎた。


 3人はいつも一緒で自他共に認める家族になっていた。


 そして季節は年末に。孤児院のリビングには、古い暖房の音と、子どもたちのわいわいした声が響く。

 壁にかかるカレンダーの「12月31日」の数字に丸がつけられていて、外はしんと冷えていた。


 その中央で、孤児院最年長であるひかりと翔はテレビの前を陣取る。普通なら小さい子供たちに合わせてみんなで見るテレビ。しかし、職員や他の子どもたちは今日は仕方ないねと暖かな目線で2人の様子を受け入れていた。


 なぜなら、今夜の歌番組は年末特番。

 出演者欄のトップには、堂々とこう書かれている。


 結崎遥香(20) 今年大人気のcabbageセンターが魅せる華麗なステージ




 そう、2年前に孤児院を出て行った遥香は、東京でアイドルになっていた。誰よりも有名になって親に幸せを見せつけるために。あの幼い時の約束を叶えるために。



 画面には、大きなステージに立つ遥香の姿。

 黒髪を揺らし、センターで光を集め、まばゆい笑顔を浮かべて歌っていた。



 そう、この番組のトリは実質若手アイドルのトップに君臨することを示している。


 ひかりは思わず息をのみ、視線を画面に奪われた。


「はるちゃん……ほんとに、スターだ……」


 テレビ越しでも圧倒される輝き。


 十年前、夕日を浴びて涙をこらえていた少女と同一人物だとは思えないほど美しく、強く、遠い。


 翔はというと、腕を組みながら画面をじっと見ている。その目は昔と変わらずクールだが、どこか誇らしげでもあった。



「まぁ……遥香ならこうなるよ。昔からやたら面倒見よくて、気が強くて、愛されるタイプだったし」



 ひかりは満足そうな翔を横目で見る。


「翔って、こういう時だけ褒めるよね」


「別に褒めてないし」


 強がるように言いながらも、翔の口元はわずかに緩んでいた。


 周りの子たちは歓声を上げている。


「はるかお姉ちゃーん!すげぇ!」

「髪きれー!歌もダンスもやばい!!」

「今年ほとんど毎日テレビ出てたよね!?」



 ひかりの胸に、深く温かい感情と寂しさが滲む。


 遥香は本当に約束を叶えた。


 親に幸せを見せつける人生にする。


 その言葉どおり、彼女は今、全国に知られる大スター。その事実にひかりも心の底から喜んだ。しかし、遠くに行ってしまった家族となかなか会えない寂しさに押しつぶされそうだった。




 ひかりは寂しさを振り払うかのように、翔の隣でつぶやく。


「……もうすぐだね」


 翔が横目を向ける。


「もうすぐ?」


「私と翔。四月でここを出なきゃ。ここを出て、自分の人生を始めるの」


 翔はわずかに視線を落とした。


「……あぁ。そうだった」


 ひかりはテレビの光に照らされた自分の指先を見つめ、息を吸った。


「私ね、東京行くよ。女優、やっぱ諦めたくないもん」


 すると翔が小さく笑った。


「まず演技どうにかしないと。高校の文化祭の劇の時、職員さん爆笑してたし」


「笑い泣きね!! 感動で!!」


 ふてくされた声を出しながらも、ひかりの頬は少し赤い。


「……私さ。はるちゃんみたいにキラキラになりたいの。あのステージに立つはるちゃんを見てると、追いかけたくなる」


 翔はしばし黙り、画面の遥香を見ながらつぶやいた。


「別に俺は芸能とか興味ないけど。働くとこくらい東京で探すつもりだよ」


 ひかりが目を丸くする。


「え、翔、来るの?東京」


「ひかりも遥香もほっとけないし。……トラブルしか起こさないから」


「しつれいすぎる!」


「遥香もみんなが東京来るの楽しみにしてたしな」


 子どもたちの声に混ざって、二人の楽しげな会話が溶け込む。


 けれど、テレビの中の遥香がアップになると、その表情に2人は止まった。


 遥香は物憂げな表情でステージライトの中心に佇み胸に手を当てていた。


─来年も、みなさんの前で笑っていられますように。


 その言葉に、ひかりの背筋がぞくっとした。


 なぜだろう。

 遥香が遠くへ行ってしまうような、そんな不安が胸を掠める。


 翔も何かを感じ取ったようで眉を寄せた。


「……なんか、変だよな? 遥香あんな言い方するタイプだったっけ?」


「ちょっと元気ない? はるちゃん年末年始忙しそうだし、ちょっとたったら電話してみるよ」


 年末のにぎやかな部屋の中で、家族だけが静かにその違和感を感じていた。

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