心に誓う復讐
翔が帰宅すると、ひかりはいつもと変わらない笑顔で出迎えてくれる。
翔もまた、胸の奥で渦巻くものを押し隠し、普段通りに振る舞う。
短い会話を交わし、部屋に戻ると、ベッドに身を投げた。体は疲れているが不思議と頭は冴えている。
翔は天井を見つめながら、考える。
あの女は金のために遥香に会いにきていた。
遥香はデビューすると瞬く間に人気が出て、テレビで見ない日はないトップアイドルだった。
きっとあの女は、そんな遥香をテレビで見かけ、金を持っているに違いないと踏み、遥香に接触してきたんだろう。
今、あの女がどこにいるのかはわからない。
遥香の死をきっかけに、東京を離れている可能性もある。
翔は頭の中で考えが駆け巡る。脳が冴えてるとでも言うのだろうか。次々と考えが浮かんだ。
あの女は探すより——来させる方が早い。
俺が、遥香以上に売れて。毎日テレビに出て。そうすれば、向こうから必ず近づいてくる。
そして、接触してきたその時、あの女が一番苦しむ方法で復讐してやる。
翔は手をグッと握りしめる。今からやるべきことははっきりと定まった。
復讐を胸の奥に沈めたまま、静かな熱が全身を満たしていく。
(俺らから遥香を奪った事、後悔させてやる)
心の中で復讐を誓った翔。
次の日から彼の仕事に対しての姿勢が変わった。
今までも迷惑をかけない程度には頑張ってはいたが、どこか本気にはなりきれてなかった。しかし、復讐を誓った日から、他人から見てもわかるくらい仕事に打ち込んでいた。
デビュー曲の練習はもちろん、地方ロケ、バラエティ、旅番組。
来た仕事はすべて引き受けた。
黒田やひかりには、
「もっと仕事を取ってきてほしい」
そう頼み込み、スケジュールは次々と埋められていく。
空白は許さなかった。
SNSも黒田と相談して始めた。投稿の内容、更新の時間、言葉選び。
すべて計算しながらフォロワーを伸ばし、気づけば、すでに芸能活動の経験があった残り三人のメンバーをも追い抜く勢いで、ファンを増やしていった。
正直、芸能活動0スタート、デビュー一ヶ月前でできることではない。
異常とも言えるスピード感だった。
ひかりは体調を心配して何度も、何度も、翔に休むよう伝えた。だが、翔は聞き入れなかった。
翔の内側に燃えていたのは、怒りだった。
いや、怒りと混じり合った、強烈な自己嫌悪。
もしかしたら、自分の存在が。自分を守るために。
遥香は、死んでしまったのではないか。
その考えが頭から離れなかった。
翔は、復讐という目的にすがらなければ、
心が壊れてしまいそうだった。
(絶対許さない)
その気持ちが翔を動かしていたのであった。




