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王都への試み、祖父母への「声」

ミニチュア版魔力波塔が完成したその日の午後。アリアの部屋は、これまでにない緊張感と期待に包まれていた。ライナー先生も、アリアと共に、この歴史的な実験の瞬間を待っていた。ポルンは、アリアの肩に止まり、その心の高鳴りを共有している。


「アリア様。このミニチュア版魔力波塔は、これまでの送信機とは、魔力伝達の構造が全く異なります。より広範囲への『放送』が可能となるはずですが、その精度は未知数です。まずは、王都のバルドリック様のお宅に、試しに送ってみましょう」


ライナー先生の言葉に、アリアは力強く頷いた。王都の祖父母宅であれば、セレスティやレオもいるかもしれない。何よりも、自分を信じて支えてくれた祖父母に、この成果を届けたかった。


アリアは、ミニチュア版魔力波塔の前に立ち、ゆっくりと目を閉じた。集中し、自身の「声聞魔法」の魔力を、階層構造魔力回路を通じて、塔へと流し込んでいく。響鳴石が、微かに光を放ち始めた。アリアは、心の中で、遠く離れた祖父母の邸宅を思い描く。


そして、優しい声で語りかけた。


「……おじい様、おばあ様。アリアです。今、私の作った、小さな魔力波塔から、お二人にお話ししています。聞こえますでしょうか?皆様に、私の声が届いていることを願って……」


アリアの声は、ミニチュア版魔力波塔を通じて、リンドバーグ家という空間を飛び出し、遠く離れた王都へと、その魔力波を放ち始めた。


その頃、王都のバルドリックの邸宅では、バルドリックとセレーネが、午後のティータイムを楽しんでいた。客間には、アリアが以前贈ってくれた虹色の響鳴石が飾られており、その隣には、アリアが制作した王室への献上品と同じ、小型のラジオ受信機が置かれている。これは、ライナー先生が、アリアが王宮に招かれた際に、祖父母にも渡しておいたものだった。


バルドリックは、紅茶を一口飲むと、静かに呟いた。


「アリアも、今頃は貴族院で勉学に励んでいることだろう。ライナーからの報告によれば、新たな魔力波塔の模型を完成させたとか」


セレーネは、優しく頷いた。


「ええ。アリアの探求心には、本当に頭が下がりますわね。あの子の『放送』も、少しご無沙汰で寂しいですわ」


その時、客間に置かれた受信機から、微かな「ザー……」というノイズと共に、アリアの澄んだ声が響き渡った。


「……おじい様、おばあ様。アリアです。今、私の作った、小さな魔力波塔から、お二人にお話ししています。聞こえますでしょうか?皆様に、私の声が届いていることを願って……」


バルドリックとセレーネは、一瞬にして言葉を失った。二人は、驚きに目を見開き、受信機に視線を集中させた。


「これは……アリアの声!?」


セレーネが、信じられないといった様子で声を上げた。


「まさか……本当に我が家に届いているとは……!」


バルドリックは、その事実に驚愕し、受信機を手に取った。アリアの声は、ノイズが混じることなく、クリアに響いている。それは、リンドバーグ家から王都までの距離を考えると、まさに奇跡と呼ぶべき現象だった。


アリアは、その後も、自身の近況や、ライナー先生との研究内容について、少し照れながら話した。そして、最後には、祖父母への感謝の言葉と、新たな弟か妹への期待を語った。


「……おじい様、おばあ様。私の声が、届いていることを願っています。そして、王都の皆様にも、いつか私の声が届けられる日が来ることを……。新しい弟か妹に会える日も、今からとても楽しみです。それでは、また」


アリアの声が途絶えると、客間には静寂が戻った。バルドリックとセレーネは、感動と、そして孫娘の才能への深い誇らしさに、胸がいっぱいになっていた。


「アリア……本当に……!」


セレーネは、目に涙を浮かべ、受信機を大切そうに胸に抱きしめた。


バルドリックは、その事実に深く頷いた。彼の脳裏には、ライナー先生の「アリア様の『放送』は、王都、そして王国全体へと、その波紋を広げていくでしょう」という言葉が蘇っていた。アリアの「声聞魔法」は、このミニチュア版魔力波塔の完成により、リンドバーグ家という小さな枠を完全に飛び越え、王都の空へと、その最初の「希望の音色」を響かせたのである。

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