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魔力波塔の夢、小さな模型に宿る

エリザベスの妊娠という喜ばしい知らせは、アリアの心に、新たな探求の炎を灯した。年の離れた弟か妹に、自分の「放送」を届けたい。もっと遠くへ、もっと多くの人に、自分の「声」を届けたい。その願いは、アリアの「声聞魔法」の可能性を広げる、新たな原動力となった。


ある日の午後、ライナー先生との授業中、アリアは、自身のそんな思いを打ち明けた。


「先生。私、もっと遠くに、私の声を届けたいんです。弟か妹に、私が歌う子守唄を、いつでも聞かせてあげたいから」


アリアの純粋な願いに、ライナー先生は優しく微笑んだ。


「素晴らしい発想です、アリア様。貴女の『声聞魔法』は、まだ貴族院の敷地内、あるいはリンドバーグ家という限られた範囲にしか届いていません。しかし、貴女の『階層構造魔力回路』と『響鳴石』の原理を応用すれば、より広範囲に音を届けることも不可能ではないでしょう」


ライナー先生は、そう言うと、黒板に一つの複雑な構造図を描き始めた。それは、いくつもの響鳴石が組み込まれた、巨大な塔のような建築物だった。


「これは……『魔力波塔』と呼ばれるものです。古文書に記された、失われた魔法文明の遺物で、遠隔地への情報伝達や、強力な魔法陣の増幅に用いられたとされています。ただし、その設計図は断片的で、実用化には至っていませんでしたが……」


ライナー先生は、アリアの描いた階層構造魔力回路の図を指さした。


「貴女のこの階層構造魔力回路と、響鳴石の共鳴理論を組み合わせれば、この『魔力波塔』の原理を解明し、さらに発展させることができるかもしれません」


ライナー先生の言葉に、アリアの目は輝いた。巨大な塔。そこから自分の声が、遠く離れた場所へ、何よりも愛しい弟か妹の元へ届く。その想像に、アリアの心は高鳴った。


「先生!私、この魔力波塔を、作ってみたいです!」


「素晴らしい意欲です、アリア様!しかし、本物の魔力波塔を建造するには、莫大な時間と資材、そして魔力が必要です。まずは、その原理を理解するための『ミニチュア版』を制作してみませんか?」


ライナー先生の提案に、アリアは力強く頷いた。


その日から、アリアはライナー先生と共に、「魔力波塔のミニチュア版」の制作に取りかかった。材料は、木材、加工された響鳴石、そして魔力回路を構成する魔石や金属線。アリアは、ライナー先生から教わった魔力回路の知識を総動員し、響鳴石の特性を最大限に活かせるよう、細心の注意を払って作業を進めた。


ミニチュア版の魔力波塔は、高さがアリアの背丈ほどもある、精巧な木製の塔だった。その内部には、響鳴石が段階的に配置され、アリアが発明した階層構造魔力回路が組み込まれている。


数週間の試行錯誤の末、ついにミニチュア版の魔力波塔が完成した。それは、アリアの部屋の片隅に、未来への希望を宿すかのように、静かにそびえ立っていた。


「完成したのですね、アリア様!素晴らしい出来栄えです!」


ライナー先生は、そのミニチュア版の魔力波塔を前に、感嘆の声を上げた。彼自身も、古文書に記された幻の技術が、アリアの手によって、これほどまでに具現化されるとは、想像していなかったのだ。


アリアは、自分の手で作ったミニチュア版の魔力波塔を、愛おしそうに見つめた。


「これで……もっと遠くへ、私の声が届くようになるのかな?」


アリアの言葉に、ポルンが、嬉しそうに小さく鳴いた。


ライナー先生は、アリアの肩を優しく叩いた。


「ええ、アリア様。このミニチュア版は、貴女の『放送』が、リンドバーグ家という小さな枠を越え、王都、そして王国全体へと、その波紋を広げていくための、最初の大きな一歩となるでしょう」


アリアの「声」は、このミニチュア版の魔力波塔と共に、遠く離れた弟か妹の元へ、そしてこの世界の隅々へと、希望の音色を響かせ始めることになる。それは、アリアが「放送の始祖」と呼ばれるようになる、その未来への、確かな序曲だった。


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