王都の喜び、遠く離れた兄姉の歓喜
リンドバーグ家に新しい命が宿ったという喜ばしい知らせは、王都の貴族院で学ぶレオ、セレスティ、アリアの三人の子供たちにも、すぐに伝えられた。アレクサンダーとエリザベスからの手紙は、王都の宿舎で、それぞれの手に届けられた。
まず、手紙を受け取ったのは、セレスティだった。王宮での授業を終え、自室に戻ったセレスティは、母からの手紙を開いた。読み進めるうちに、彼女の顔には驚きと、そして深い喜びの色が広がっていった。
「お母様が……また、赤ちゃんを授かった、ですって……!」
セレスティは、感動のあまり、目に涙を浮かべた。幼い頃から、いつも妹を気遣い、家族を大切にしてきた彼女にとって、新たな家族が増えるという知らせは、何よりも嬉しいものだった。レオやアリアとは年が離れていたが、自分たちの手で、幼い弟か妹を育てることができる。その想像に、セレスティの心は温かい光で満たされた。
「アリアも、きっと喜ぶでしょうね……」
セレスティは、そう呟くと、すぐにアリアの宿舎の部屋へと向かった。
アリアは、ライナー先生との授業を終え、部屋の黒板に向かっているところだった。セレスティが、興奮した様子で部屋に入ってくるなり、手紙を差し出した。
「アリア!お母様がね、また赤ちゃんを授かったそうよ!」
セレスティの言葉に、アリアは、持っていたチョークを取り落としそうになった。彼女の顔には、驚きと、そして一瞬の戸惑いが浮かんだ。しかし、すぐにその表情は、満面の笑顔へと変わった。
「赤ちゃん!?お母様が!?本当ですか、お姉様!」
アリアは、セレスティから手紙を受け取り、何度も読み返した。新たな命の兆し。それは、アリアが「家内放送」を通じて届けてきた「希望の音色」が、リンドバーグ家自身の未来にも、確かな光をもたらしたかのようだった。
「私の、弟か妹が……!嬉しい!すごく嬉しいです!」
アリアは、感動のあまり、ポルンを抱きしめ、喜びの声を上げた。彼女は、年の離れた弟か妹に、自分の「声聞魔法」で、もっとたくさんの物語を聞かせたい、もっとたくさんの歌を届けたいと、心から願った。
そして、レオ・リンドバーグの元にも、その知らせは届いた。訓練場で剣術の練習をしていたレオは、父からの手紙を読み、一瞬、その屈強な体が硬直した。
「まさか……この私が、また兄になる、だと……?」
レオは、信じられないといった様子で、手紙を何度も読み返した。幼い頃から、自分に続く兄弟はもうできないと思っていた彼にとって、この知らせはまさに青天の霹靂だった。しかし、その驚きは、すぐに温かい喜びへと変わっていった。
(また、幼い子供が、このリンドバーグ家に……)
レオの脳裏には、幼い頃のアリアやセレスティの姿が蘇った。自分が、どれだけ不器用ながらも、妹たちを大切に思っていたか。今度は、もっと年の離れた弟か妹だ。自分は、どんな兄になれるのだろうか。
「ふん……まあ、悪くない」
レオは、ぶっきらぼうにそう呟いたが、その口元には、優しい笑みが浮かんでいた。彼の心には、騎士としての誇りとはまた異なる、兄としての温かい喜びが満ちていた。
その日の午後、レオはセレスティとアリアの宿舎を訪れた。三兄妹は、食堂の一角で顔を合わせ、新たな家族の誕生について、興奮気味に語り合った。
「お父様もお母様も、きっと喜んでいらっしゃるわね」
セレスティが優しく言うと、アリアは目を輝かせた。
「うん!私、新しい弟か妹に、私の『放送』で、たくさん歌を歌ってあげたいな!」
レオは、そんな妹たちの言葉を、以前のような冷たい視線ではなく、温かい眼差しで見守っていた。
「まあ、せいぜい、うるさくしすぎない程度にな。だが……私も、楽しみだ」
レオの言葉に、セレスティとアリアは、喜びのあまり顔を見合わせた。




