姉を立てる妹、友情の輪の中で
貴族院での「妖精たちのさえずり」の騒動から数日後。セレスティ・リンドバーグは、いつものように友人たちとのお茶会を、貴族院の談話室で開いていた。エレノア・クロフォード、ベアトリス・ハートフィールド、キャサリン・ウッドブリッジ、そしてルシア・ヴァーノン。皆、先日のアリアとフローラ王女の光景に、未だ興奮冷めやらぬ様子だった。
「セレスティ様!先日のアリア様とフローラ王女殿下の光景は、本当に夢のようでしたわ!貴女様のご実家には、本当に妖精が住んでいらっしゃるのね!」
エレノアが、目を輝かせながら興奮気味に話した。
「ええ、あのような純粋な魔法は、見たことがありませんでしたわ。アリア様の歌声は、まるで心を洗われるようでした」
キャサリンが、感動に浸るように呟いた。
「アリア殿の能力は、学術的にも非常に興味深い。単なる動物との意思疎通に留まらず、周囲の生命体と深く共鳴する魔力特性を持っていると推測されます。その解析が、今後の魔法理論に大きな影響を与えることは間違いないでしょう」
ルシア・ヴァーノンも、冷静ながらも、アリアの能力への深い関心を示した。
セレスティは、友人たちの言葉に、誇らしくも少し照れたような笑みを浮かべていた。妹の才能が、ここまで多くの人々に認められていることに、心から喜びを感じていた。
その時、談話室の扉が開き、アリアがライナー先生と共に顔を出した。アリアは、ライナー先生との午後の授業を終え、セレスティの様子を見に来たのだ。
「お姉様、皆様。ごきげんよう」
アリアが、丁寧に挨拶をすると、友人たちは一斉にアリアに視線を向け、歓迎の言葉を贈った。フローラ王女との一件以来、アリアは貴族院の生徒たちの間でも、憧れの存在となっていた。
セレスティは、アリアを自分の隣へと招き入れた。
「アリア。みんな、貴女の先日の魔法について、感銘を受けていたわ」
セレスティが優しく促すと、アリアは少し俯きながら、謙虚な言葉を口にした。
「いえ、そんな……。私なんて、まだまだ未熟な者でございます。全ては、お姉様とレオ兄様、そしてライナー先生のおかげです」
アリアの言葉に、友人たちは驚きの表情を浮かべた。自らの才能を誇ることなく、謙虚に、そして兄と姉への感謝を述べるアリアの姿は、彼らにとって、さらに魅力的に映った。
「私が『声聞魔法』という、自分だけの魔法を見つけられたのは、幼い頃から、お姉様がいつも私のことを信じ、支えてくれたからです。お姉様が、私の魔法の可能性を、誰よりも早く理解してくださったから、私は、こうして自分の道を歩むことができています」
アリアは、セレスティに視線を向け、心からの感謝の言葉を述べた。セレスティは、妹の言葉に、感動のあまり、目に涙を浮かべた。アリアが、これほどまでに自分のことを思ってくれているとは。
「そして、レオ兄様も、私が王宮の危機を救ったと聞いて、初めて私の魔法を認めてくださいました。兄様がいなければ、私は、ずっと『落ちこぼれ』のままで、自分の居場所を見つけることもできなかったかもしれません」
アリアは、レオへの感謝も忘れなかった。彼女は、レオの厳しい態度が、自分を奮い立たせる原動力になっていたことも理解していた。
「ライナー先生も、私の魔法が単なる偶然ではなく、この世界の理に関わるものだと教えてくださり、私の探求心を広げてくださっています。私が今、こうして貴族院で学べるのも、皆様のおかげなのです」
アリアの言葉は、自己の成功を全て周囲の人々の支えに帰するものだった。その謙虚な姿勢と、兄と姉への深い感謝の気持ちは、友人たちの心に深く響いた。
エレノアは、セレスティに視線を向けた。
「セレスティ様。貴女様も、アリア様の成長に、きっと大きく貢献されたのでしょうね。本当に、素晴らしいご姉妹ですわ」
ベアトリスも、感動の面持ちで頷いた。
「アリア様は、ご自身の才能をひけらかすことなく、周囲への感謝を忘れない。本当に、素晴らしいお人柄ですわ」
セレスティは、妹の言葉と、友人たちの称賛に、心から喜びを感じていた。アリアが、自分の言葉で、兄と姉を立ててくれたことに、セレスティは深い感動を覚えていた。妹は、もう「落ちこぼれ」ではない。自分の力で、多くの人々の心を動かし、そして、周りの人々への感謝を忘れない、立派な魔法使いへと成長していたのだった。




