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貴族院の幻想、妖精たちのさえずり

貴族院に入学し、特別研究科生として、ライナー先生との学びを深めるアリア。フローラ王女もまた、一年生として貴族院での勉学に励む日々を送っていた。二人の友情は、王宮での文通を通じて、より一層深まっていた。


ある晴れた日の午後、授業の合間の休憩時間。フローラ王女は、アリアと二人で、貴族院の中庭へと足を運んだ。中庭は、手入れの行き届いた花壇と、古木の並木が美しい、生徒たちの憩いの場だった。


「アリア様。貴族院の授業は、とても興味深いですわ!特に、魔法理論は、アリア様から教えていただいたことと繋がる部分が多くて、とても楽しいです!」


フローラ王女は、目を輝かせながらアリアに話しかけた。アリアも、王女が貴族院での学びを楽しんでいることに、安堵と喜びを感じていた。


「フローラ王女殿下が、楽しんでいらっしゃるなら、私も嬉しいです。王女殿下は、きっと貴族院でも、たくさんのことを学べると思います」


二人の会話は、和やかな空気に包まれていた。周囲には、授業を終えた生徒たちが三々五々集まり、談笑したり、本を読んだりしている。レオとセレスティも、少し離れた場所で学友たちと話していた。


アリアは、ふと、中庭に舞い降りてきた一羽の小鳥に目を留めた。そして、その小鳥に、そっと手を差し出し、優しい歌を口ずさみ始めた。それは、リンドバーグ家に伝わる、古くからの民謡だった。ごく微量の「声聞魔法」が込められたその歌声は、貴族院の庭園へと広がり、周囲の小鳥たちの心を優しく包み込んでいく。


すると、中庭の木々から、一羽、また一羽と、小鳥たちがアリアの周りに集まり始めた。最初の一羽がアリアの指先に止まると、アリアはにこりと微笑んだ。その笑顔と歌声に引き寄せられるように、さらに多くの小鳥たちが舞い降りてくる。青い鳥、黄色い鳥、赤い鳥。色とりどりの小鳥たちが、アリアの頭や肩、腕に止まり、彼女の周りを賑やかに飛び交い始めた。


そして、小鳥たちは、恐れることなくフローラ王女の周りにも集まってきた。一羽の小さなヒバリが、フローラ王女の肩に舞い降り、別のシジュウカラが、彼女の膝にちょこんと止まったのだ。フローラ王女は、その光景に、驚きと、そして心からの喜びで目を輝かせた。王宮の庭園での再来だった。


「まあ!アリア様!みんな、また来てくれましたわ!」


フローラ王女は、嬉しさのあまり、小さく声を上げた。アリアも、王女が喜んでくれることに、満面の笑顔を向けた。


その幻想的な光景は、中庭で過ごしていた多くの生徒たちの目を奪った。談笑していた生徒たちは、一斉に言葉を失い、アリアとフローラ王女の周りに集まる小鳥たちの群れを見つめていた。


「あれは……!アリア・リンドバーグ様と、フローラ王女殿下ではないか!」


「信じられない……!まるで、絵本の世界のようだ……」


生徒たちの間から、ざわめきが起こる。


「本当に、森の精霊に愛された少女だったのだな……」


「そして、王女殿下も、精霊に祝福されている……!」


誰かが、そう呟いた。その言葉は、あっという間に周囲に広がり、多くの生徒たちが、その幻想的な風景に、アリアとフローラ王女を「妖精」と称するようになった。


レオとセレスティも、その光景を目にしていた。レオは、遠くから妹たちを見つめ、その表情には、驚きと、そして深い誇らしさが混じり合っていた。セレスティは、アリアが多くの小鳥たちに囲まれている姿を見て、心の中で、妹の持つ純粋な魔法の力を改めて確信していた。


貴族院の中庭は、一瞬にして、神秘的な「妖精の庭」へと変貌を遂げた。アリアの「声聞魔法」は、王宮の壁を越え、貴族院の最高学府で、その真価を公に示したのだ。そして、フローラ王女との友情は、アリアの存在を、この王国全体に、希望の光として輝かせる、かけがえのないものとなっていたのである。

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