王家の承認、魔法の特待生
貴族院から提出されたアリア・リンドバーグに関する報告書は、王宮の国王、女王、そして先代の王の元に届けられ、即座に厳重な審議の対象となった。王宮の識者たちは、アリアの「声聞魔法」と、その驚異的な学術的洞察力に、驚きを隠せなかった。
「貴族院の報告によれば、アリア殿は、すでに最上級生レベルの知識と洞察力を持っているという。11歳の少女が、これほどの才能を秘めているとは……」
国王は、分厚い報告書を閉じ、深くため息をついた。その声には、驚きと、そしてこの国の未来を担う新たな才能への、期待が滲んでいた。
女王もまた、報告書の内容に深く感銘を受けていた。特に、アリアの「階層構造魔力回路」の発想が、魔力の効率的な利用という長年の課題に、具体的な解決策を提示しているという点に、彼女は強い関心を抱いていた。
「ライナー・グレンジャーの報告は、間違いなかったのですね。アリア殿の魔法は、単なる珍しい能力に留まらず、王国全体の魔法技術を飛躍的に向上させる可能性を秘めている」
女王の言葉には、アリアの才能への確かな評価が込められていた。
先代の王は、静かに頷いた。彼は、アリアがフローラ王女にもたらした良い影響を目の当たりにしていただけに、この報告書の内容が真実であることを疑わなかった。
「アリア殿を、通常の貴族院一年生の枠に留めておくのは、確かに得策ではないだろう。彼女の才能を最大限に伸ばすためにも、特別な教育措置を講じるべきだ」
先代の王の言葉は、三人の王族の総意となった。
数日後、リンドバーグ家へと、王宮からの正式な通達が届けられた。それは、国王陛下の御名において、アリア・リンドバーグに対する特別な教育措置を承認する旨の文書だった。
アレクサンダーとエリザベスは、その厳かな書状を前に、緊張しながらも、その内容を読み進めていった。
「リンドバーグ家当主アレクサンダー殿、並びにエリザベス夫人へ
この度、貴族院より提出された、貴殿らの令嬢アリア・リンドバーグ殿の資質に関する報告書を精査いたしました。
国王陛下、女王陛下、並びに先代の王陛下の御裁定により、アリア殿の天賦の才能と、その学術的・実用的価値の高さは、王国の未来にとってかけがえのないものであると認められました。
つきましては、アリア殿が来年貴族院に入学される際、通常の学年制度に縛られることなく、その才能を最大限に伸ばせるよう、特別な教育措置を講じることを決定いたしました。貴殿の令嬢は、貴族院入学と同時に、『特別研究科生』として、上級学年のカリキュラム、並びにライナー・グレンジャー殿を始めとする学術顧問による個別指導を受けることを許可いたします。
これは、アリア殿の才能を尊重し、王国の未来に貢献せんとする、王家の強い願いでございます。貴殿らにおかれましては、この決定を受け入れ、今後もアリア殿の教育に、ご尽力いただきたく存じます。
ラングフォード王国国王より
手紙を読み終えたアレクサンダーとエリザベスは、驚きと、そして深い感動に打ち震えた。「特別研究科生」として、最上級の教育を受けることを許可されたアリア。それは、かつて「落ちこぼれ」と蔑まれていた娘の才能が、王家によって公式に認められたことを意味していた。
「アリアが……特別研究科生に……!」
エリザベスは、目に涙を浮かべ、感動のあまり声が震えていた。
アレクサンダーもまた、その事実に言葉を失っていた。彼は、ライナー先生の言葉を思い出す。アリアの魔法は、この世界の常識を変える。その言葉が、今、現実のものとなっていた。
ライナー先生は、その報告をアリアに伝えた。アリアは、自分が「特別研究科生」として貴族院に入学することになるという事実に、目を丸くした。
「私が……特別研究科生に?お姉様やレオ兄様と違うんですか?」
アリアが尋ねると、ライナー先生は優しく頷いた。
「ええ、アリア様。貴女は、この貴族院の歴史上でも、極めて異例の待遇を受けることになります。それは、貴女の才能が、この王国の未来を大きく変える力を持っていると、王家が認めた証です」
ライナー先生の言葉に、アリアは、自分の魔法が持つ重い責任と、そして未来への大きな期待を感じた。王宮での経験、フローラ王女との友情、そしてライナー先生との学び。それら全てが、アリアの「声聞魔法」を、王国の未来を担う、希望の光へと導いていた。




