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賢者の議論

ライナー・グレンジャー、ロジャー・アシュトン、エディス・モルガン。三人の学者は、アリアの部屋での視察を終えた後、リンドバーグ家の書斎で、アリアの資質と、彼女の「声聞魔法」が持つ可能性について、熱く議論を交わしていた。


「アリア様の才能は、従来の魔力測定器では測りきれない『質』にあります。魔力の総量こそ平均以下ですが、その魔力は、生命そのものとの共鳴、そして情報の微細な伝達に極めて特化している。これは、既存の魔法理論を根本から見直す必要性を示唆しています」


ライナー先生が、興奮冷めやらぬ様子で語った。


「その通りだ、ライナー。彼女が編み出した『階層構造魔力回路』は、魔力の効率的な利用という長年の課題に、明確な回答を与えている。これは、魔導具の設計思想そのものを変革する可能性を秘めているぞ!」


ロジャーが、アリアが描いた回路図を手に、熱弁を振るった。彼の専門である魔力の物質化とその応用分野にも、アリアの発想は新たな道を拓くものだった。


「そして、何よりも驚くべきは、彼女が動物たちから得る情報の正確さです。古文書に記された『生命の声を聞く者』の伝説と、アリア殿の能力は、驚くほど合致している。魔物の出現情報、珍しい植物の自生地……これらは、学術的な探求だけでなく、王国の安全保障にも直結する重要な情報源となり得ます」


エディスは、アリアが動物たちから得た情報が書き込まれた黒板の写真を見つめながら、その学術的、そして実用的な価値を指摘した。


三人の学者は、アリアの才能が、一介の貴族の娘の個人的な能力に留まらず、王国の魔法理論、魔導具技術、さらには安全保障にまで、計り知れない影響を与える可能性を秘めていることで意見が一致した。


「しかし、この才能を、このままリンドバーグ家内部に留めておくのは、あまりにも惜しい。だが、性急に公表すれば、理解を得られず、反発を招く危険性も否めない」


ライナー先生が、今後の課題を口にした。


「そこで、我々は、アリア様の研究の進捗と、その才能について、貴族院の上層部に報告すべきだと考える。彼女の能力が、いかに学術的に、そして王国にとって重要であるかを、客観的なデータと理論に基づいて説明するのだ」


ロジャーの提案に、エディスも賛同した。


「王宮の危機を救った功績もある。女王陛下も、アリア殿の能力を高く評価されていると聞く。これは、彼女の才能を、正しく認知してもらう好機となるでしょう」


三人は、その日のうちに、アリアの「声聞魔法」に関する詳細なレポートを作成し始めた。階層構造魔力回路の原理、響鳴石との共鳴理論、動物たちからの情報収集のメカニズム、そして王宮での魔物騒動における功績。あらゆる側面からアリアの能力を分析し、その学術的価値と王国への貢献度を、客観的かつ綿密に記述した。


数日後、そのレポートは、ライナー・グレンジャーの名で、貴族院の学院長、そして魔法学部の学部長へと提出された。レポートを受け取った貴族院の上層部は、その内容に驚愕した。特に、アリアが11歳という若さで、これほど革新的な理論を構築し、実践しているという事実は、彼らの常識を遥かに超えるものだった。


貴族院の上層部は、レポートの内容を精査し、その信憑性について議論を重ねた。しかし、ライナー・グレンジャーという信頼のおける学者の報告であること、そして王宮での魔物騒動におけるアリアの功績が既に周知の事実であることから、彼らはその情報の正確性を認めざるを得なかった。


このレポートの提出は、アリアの存在を、リンドバーグ家という小さな枠から、王国の学術界の公式な注目へと引き上げる、重要な転機となった。

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