王女の喜び、移動する「知」の城
アリアの元にグリフィン工房からの感謝の品としてキャスター付き黒板が届けられた、その同時期。王宮でも、フローラ王女の元に、同様の献上品が届けられていた。グリフィン工房は、フローラ王女の学力向上に貢献した黒板を、王室にも正式に献上することにしたのだ。
王宮の自室で、王室の執事が厳かに届けられた荷物を開いた。中から現れたのは、アリアの部屋に届けられたものと同じ、中型のキャスター付き黒板だった。その洗練されたデザインと、滑らかな車輪に、フローラ王女は目を輝かせた。
「まあ!これは……!」
フローラ王女は、驚きと喜びの声を上げた。彼女は、王宮の家庭教師たちから、王都の貴族たちの間で黒板が異常な人気を博していること、そしてそれがグリフィン工房の尽力によるものであることを聞いていた。
「フローラ王女殿下。こちらは、グリフィン工房が、王女殿下の学力向上と、黒板の普及に貢献されたことへの感謝の印として、献上された品でございます」
執事が恭しく説明すると、フローラ王女は、早速キャスター付き黒板に触れてみた。軽く押すと、黒板は音もなく滑らかに移動する。
「素晴らしいですわ!これなら、お部屋の好きな場所に持って行けますし、おじい様のお部屋にも、これを使って見せに行くことができますわね!」
フローラ王女は、満面の笑顔で喜んだ。これまでの大きな黒板は、一度設置すれば動かすのが大変だったが、このキャスター付き黒板ならば、自分の学びの場を、王宮のどこへでも持ち運ぶことができる。
(きっとアリア様も、こんなに素敵な黒板を頂かれたに違いないわ!)
フローラ王女は、アリアからの手紙で、彼女がもう一つの黒板を手に入れたことを知っていた。そして、アリアも同じように、このキャスター付き黒板を手に入れているだろうと確信した。友人とお揃いの品を手にできたことに、王女の心は温かい喜びで満たされた。
王室の家庭教師たちも、フローラ王女の新しい黒板に感嘆の声を上げた。
「これならば、王女殿下のご希望に応じて、様々な場所で学習を進めることができますね。グリフィン工房も、素晴らしい発想です」
家庭教師の一人が言うと、フローラ王女は、黒板に書かれた王宮の庭園の鳥たちの絵を指さした。
「わたくし、この黒板で、もっとたくさんの鳥たちの絵を描いて、アリア様にお手紙で送って差し上げますわ!そして、アリア様がどんなことを書かれているのか、今度お会いした時に、もっとたくさんお話を聞かせていただきたいです!」
フローラ王女の目には、新しい黒板が、アリアとの友情を深め、自身の知的好奇心をさらに広げるための、大切な道具として輝いていた。
王宮の一室に届けられたキャスター付き黒板は、フローラ王女にとって、単なる学習用具以上の意味を持っていた。それは、アリアの「声」が、王都の貴族社会、そして王室の日常に、新たな「知」の波紋を広げ、友情という名の絆を、さらに強固なものにしていることを象徴していたのである。




