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工房からの感謝、転がる「知」の道具

王都での「黒板ブーム」が巻き起こる中、リンドバーグ家には、ある日、王都の木工工房から一通の手紙と、大きな荷物が届けられた。差出人は、王都で最も歴史のある木工工房、「グリフィン工房」の当主からだった。


アレクサンダーは、何事かと首を傾げながら、その手紙を開いた。隣にはエリザベスも、興味深そうにその様子を見守っている。


「リンドバーグ家当主アレクサンダー様。この度、王女殿下をはじめ、貴族の皆様方に多大なるご愛顧を賜り、我が工房の黒板は、かつてないほどの需要を頂戴しております。これもひとえに、貴家のお嬢様、アリア様が黒板を学習の道具としてご活用くださったこと、そしてそれがフローラ王女殿下のご学力向上に繋がったという、まことに尊き御功績の賜物と存じます。


本来であれば、直接お伺いし御礼申し上げるべきところ、多忙につき書状にて失礼いたします。つきましては、ささやかではございますが、我が工房の心ばかりの感謝の印として、最新型の黒板をお送りいたしました。貴家のお嬢様、アリア様が、今後もより一層、そのご学業とご研究に励んでいただけますよう、心よりお祈り申し上げます。


グリフィン工房 当主より


手紙を読み終えたアレクサンダーとエリザベスは、顔を見合わせ、驚きと、そして喜びの表情を浮かべた。


「まあ!アリアのおかげで、工房の方々も潤っているのですね!」


エリザベスは、感動のあまり、目に涙を浮かべた。娘が、王宮の危機を救うだけでなく、こうして市井の人々の暮らしにまで良い影響を与えていることに、母としてこれ以上ない喜びを感じた。


アレクサンダーもまた、アリアの「発明」が、王国の経済活動にまで波及していることに、深く感銘を受けていた。単なる学習用具としての黒板が、貴族社会で異常な人気を博したことで、工房は大量生産の体制を整え、多くの職人が雇用されたのだ。これは、アリアの「声聞魔法」と、その発想がもたらした、予期せぬ副産物だった。


「アリアの才能が、これほどまでに波紋を広げるとは……。ライナーの言っていた通りだ」


アレクサンダーは、ライナー先生の言葉を思い出した。彼は、アリアの魔法が、この世界の常識を変える可能性があると、常に主張していた。


そして、荷物の中からは、真新しい黒板が姿を現した。それは、アリアが既に持っている大型の黒板よりも一回り小さく、しかし、底部には滑らかな車輪が取り付けられた、キャスター付きの黒板だった。


「これは……持ち運びができる黒板、ですか!」


ライナー先生も、その機能性に目を輝かせた。


アリアは、その新しい黒板を見て、瞳をキラキラと輝かせた。


「わぁ!すごい!これなら、どこにでも持っていける!」


アリアは、早速キャスター付きの黒板を軽く押してみた。車輪は滑らかに動き、黒板は軽々と部屋の中を移動する。これなら、書斎でのライナー先生との授業に持っていくこともできるし、天気の良い日には庭に持ち出して、小鳥たちの観察をしながら書き込むこともできる。


「グリフィン工房の皆様に、心からの御礼を伝えるように。そして、アリア。この黒板も、貴女の研究に役立てなさい」


アレクサンダーは、アリアに優しく語りかけた。


アリアは、新しい黒板を撫でながら、喜びで胸をいっぱいにしていた。自分の「発明」が、多くの人々の役に立ち、そして感謝されている。その事実が、アリアの探求心を、さらに強く刺激した。


この日、アリアの部屋には、新たな「知」の道具が加わった。それは、アリアの「声」が、王宮の壁を越え、王国の経済活動にまで影響を与え始めたこと、そして、その影響が、さらに遠くへと転がっていくであろうことを示す、確かな兆しとなっていたのである。

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