王女の好奇心、黒板が拓く学びの道
フローラ王女は、アリアからの手紙と、女王陛下からの許可を得て手に入れた新しい黒板に、心から夢中になっていた。王宮の自室の一角に設置された黒板は、王女にとって、これまでの堅苦しい勉強部屋とは異なる、自由な発想を育む場所となっていた。
フローラ王女は、アリアの真似をして、王宮の庭園で見かける珍しい鳥たちの絵を描き始めた。アリアから贈られた虹色の響鳴石は、黒板の隣に飾られ、王女の創作意欲を刺激する輝きを放っている。最初はぎこちなかった絵も、毎日描き続けるうちに、生き生きとした表情を持つようになった。
そして、王女は、黒板をただ絵を描くだけでなく、勉強にも積極的に活用するようになった。王宮の家庭教師から教わった歴史の出来事を、年表のように書き出してみたり、地理の授業で習った地図を、アリアの部屋の黒板のように詳細に書き込んでみたり。アリアとの文通で得た、王宮周辺の森の生態系についても、絵と文字を交えて記録していった。
「フローラ王女殿下。この歴史の年表、非常に分かりやすく整理されていますね。貴女様が、ご自身で工夫されたのですか?」
王室の家庭教師の一人が、フローラ王女の黒板を見て、驚きの声を上げた。これまでのフローラ王女は、成績は優秀だったものの、どちらかといえば受け身の学習態度だったからだ。
「はい!アリア様が、ご実家でこんな風に勉強していると教えてくださったので、わたくしも真似してみましたの!」
フローラ王女は、目を輝かせながら答えた。彼女は、アリアの「放送」を通じて、情報が視覚的に整理されることの面白さを知ったのだ。
家庭教師たちは、フローラ王女の学習意欲の向上と、その独創的な学習方法に感銘を受けた。特に、アリアが「森の精霊」だと噂されていることもあり、王女のこの変化が、アリアの影響であることは明らかだった。
「フローラ王女殿下は、本当に素晴らしい発想をお持ちでいらっしゃる。この方法ならば、より深く知識を定着させることができますね」
家庭教師たちは、口々にフローラ王女を称賛した。フローラ王女は、そうした称賛の言葉を聞くたびに、顔を紅潮させ、さらに学習意欲を高めていった。
(わたくし、もっと頑張って、アリア様みたいに、たくさんのことを知りたいわ!)
フローラ王女は、褒められて伸びるタイプだった。これまでは、王族としての義務感から勉学に励んでいた部分も大きかったが、アリアとの出会いと、黒板という新しい学習ツールを得たことで、勉学そのものが「楽しい」と感じるようになったのだ。
女王もまた、フローラ王女のこの変化に、喜びを感じていた。娘が、受け身ではなく、自らの好奇心に基づいて学びを深めていること。そして、それがアリアという友人との交流によってもたらされたものであることに、女王は深い感銘を受けていた。
「アリア殿の魔法は、単なる情報伝達の道具に留まらず、フローラの心に、学びの喜びという光を灯してくれたのですね」
女王は、ライナー先生からの報告を聞きながら、静かに呟いた。
王宮の一室で、フローラ王女の黒板は、アリアの「声」がもたらした、静かなる革命の象徴として、輝きを放っていた。それは、王女の学びの道を拓き、やがて王宮に、そして王国全体に、新しい知識と希望を広げていくための、確かな礎となっていたのである。




