王女の黒板、両親の頭痛
アリアの部屋に新しい黒板が設置され、彼女がフローラ王女に手紙を送ってから数日後、王宮からの便りがリンドバーグ家に届いた。差出人はフローラ王女殿下。アリアは、胸を高鳴らせながら封を開けた。
「アリア様。貴女様のお手紙、嬉しく拝見いたしましたわ!わたくしも、お母様に頼んで、大きめの黒板のセットを一つ、買っていただくことができましたの!これで、アリア様のように、王宮の庭園で見かける珍しい鳥たちの絵を描いたり、おじい様から教えていただいた昔の出来事を書き込んだりできますわ!わたくしの部屋も、アリア様のお部屋のように、もっと楽しい場所になりそうですわね。アリア様からの虹色の響鳴石も、この黒板の隣に飾って、大切にいたしますわ。今度、どんな絵を描いたか、またお手紙で報告させてくださいね! フローラより」
手紙を読み終えたアリアは、満面の笑みを浮かべ、喜びのあまり小さく飛び跳ねた。
「ポルン!見て見て!フローラ王女殿下も、黒板を買ってもらえたんだって!」
ポルンも、アリアの喜びを感じ取って、小さく鳴いた。アリアは、王女との友情が、こんなにも同じ「喜び」を生み出していることに、心から感動していた。
アリアは、その喜びを伝えようと、すぐに母エリザベスの部屋へと駆けつけた。
「お母様!聞いてください!フローラ王女殿下も、黒板を買ってもらえたそうですわ!私とお揃いです!」
アリアは、フローラ王女からの手紙を、興奮気味にエリザベスに見せた。
エリザベスは、娘の満面の笑顔と、手紙の内容を見て、驚きに目を見開いた。
(まさか……本当に、王女殿下が黒板を欲しがるとは……!)
娘が、王族の令嬢に「黒板」をねだらせる影響力を持っていたことに、エリザベスは複雑な気持ちになった。誇らしい気持ちと、そして、貴族としての礼儀や常識に反するのではないかという不安が、彼女の心の中で交錯する。
「そ、そう……フローラ王女殿下も、黒板を……それは、素晴らしいことね、アリア」
エリザベスは、なんとか笑顔を取り繕ったが、内心は穏やかではなかった。王女が、貴族の娘の真似をして、王宮で黒板を欲しがるなど、前代未聞の事態である。これが、王室内部でどのように受け止められるか、不安で仕方なかった。
その日のうちに、エリザベスはアレクサンダーにこのことを報告した。アレクサンダーもまた、フローラ王女からの手紙と、アリアの喜びようを見て、頭を抱えた。
「これは……困ったことになった。王女殿下が、アリアの影響で黒板を欲しがるとは……」
アレクサンダーの顔には、深い皺が刻まれた。王族、特に現国王の娘であるフローラ王女が、リンドバーグ家の娘の真似をするというのは、外交的にも、貴族社会の秩序においても、非常にデリケートな問題だった。王家が、リンドバーグ家を軽んじている、あるいはアリアの能力を警戒していると解釈されかねない。
「私たちが、すぐに女王陛下宛に、謝罪の手紙を送るべきですわ!」
エリザベスが、不安げに提案した。アレクサンダーも、それに同意した。




