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黒板の連鎖、王女の願い

数日後、リンドバーグ家に、アリアがおねだりした、もう一つの大きな黒板セットが届けられた。部屋の隅に運び込まれた新しい黒板を見て、アリアの瞳は、以前と同じようにキラキラと輝いた。彼女は、早速それを部屋の壁に設置し、既存の黒板と並べた。


「わぁ……!これで、もっとたくさんの情報を書き込めるわ!」


アリアは、嬉しさのあまり、小さく飛び跳ねた。ポルンも、アリアの喜びを感じ取っているのか、小さく鳴いた。新しい黒板には、フローラ王女との文通で得た、王宮周辺の地理情報や、王都で流行している珍しい花の名前、そして王宮の庭園で見かける小鳥の種類などを書き込むことにした。アリアの部屋は、ますます「情報司令室」としての機能を強化していく。


その日のうちに、アリアはフローラ王女に手紙を書いた。


「フローラ王女殿下。先日は、王宮に招いていただき、本当にありがとうございました。おかげで、私の『放送』も、もっと多くの情報をお届けできるようになりました。そして、この度、お母様に、新しい大きな黒板を買っていただきました!これで、王宮周辺の地図や、王女殿下から教えていただいた珍しい花のことも、書き込めます。私の部屋は、まるで小さな王宮の地図帳のようになりましたわ。フローラ王女殿下も、もしよろしければ、王宮で見た珍しい鳥の絵などを描いて送ってくださったら、嬉しいです。アリアより」


アリアの手紙は、数日後に王宮へと届けられ、フローラ王女の手に渡った。フローラ王女は、アリアからの手紙を読み、目を輝かせた。


「まあ!アリア様、新しい黒板を買っていただいたのですわね!王宮周辺の地図まで!」


フローラ王女は、アリアの部屋が、さぞかし賑やかになったであろうことを想像し、心から楽しそうに微笑んだ。アリアが、自分の教えてくれた情報を、そんな風に大切にしてくれていることが、王女にとって何よりも嬉しかった。そして、アリアが提案してくれた「王宮で見た珍しい鳥の絵」というアイデアにも、強く心を惹かれた。


(アリア様のお部屋は、本当に楽しそうですわね……)


王宮の自室の壁は、王家の肖像画や歴史的な調度品で飾られている。もちろんそれは素晴らしいものだが、アリアの部屋のように、自由に情報を書き込み、想像力を働かせられる場所とは違う。王女の心に、ある願望が芽生えた。


その日の午後、フローラ王女は、女王の元を訪れた。女王は、執務室で書類仕事に目を通しているところだった。


「お母様。あの、わたくし、お願いがございますの」


フローラ王女は、少し控えめに、しかし真剣な眼差しで女王に訴えかけた。


「フローラ。一体、何ですか?何か、貴族院での勉学のことかしら?」


女王は、娘の願いが、王女らしいものであることを期待していた。


「いいえ、お母様。わたくし、大きめの黒板のセットを、一つ、欲しいのです」


フローラ王女の言葉に、女王は、一瞬にして目を丸くした。その顔には、エリザベスがアリアから同じ願いを告げられた時と全く同じ、驚きと困惑の色が浮かんでいた。


「黒板、ですって?フローラ。貴女が、なぜそのようなものを……」


女王は、フローラ王女が絵本や可愛らしい宝飾品をねだることはあっても、「黒板」を欲しがるとは、夢にも思っていなかった。


「はい!アリア様が、新しい黒板を買っていただいて、王宮周辺の地図や、色々な情報を書き込んでいると教えてくださいましたの!わたくしも、アリア様のように、王宮の庭園で見かける珍しい鳥の絵を描いたり、おじい様から教えていただいた歴史の出来事を書き込んだりしたいのですわ!」


フローラ王女は、アリアの手紙を女王に見せながら、熱心に説明した。アリアが提案した「絵を描いて送る」というアイデアが、王女の心を強く惹きつけていたのだ。


女王は、娘の熱心な様子と、アリアの手紙の内容に、深く感銘を受けた。アリアの魔法が、単なる情報伝達の道具に留まらず、フローラ王女の知的好奇心と創造性を刺激していることを理解したのだ。


「なるほど……。アリア殿の影響、というわけですね。分かりましたわ、フローラ。貴女のために、黒板を用意させましょう。ですが、王宮の壁に直接書き込むのはやめてくださいね」


女王は、少し呆れたような笑みを浮かべながらも、娘の願いを叶えることを約束した。フローラ王女は、満面の笑顔で女王に抱きついた。


アリアの「黒板」が、王宮にまで連鎖した。

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