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盗み聞きと大騒ぎ、食卓の小さな変化

書斎でのアレクサンダーとエリザベス、そしてライナー先生の厳粛な会話は、残念ながら、屋敷の奥で掃除をしていた若メイドのエミーリアの耳に、偶然にも届いてしまっていた。書斎のドアは完全に閉まっていなかったのだ。


(王宮で魔物?アリア様が、王宮を救った?国王陛下から感謝の言葉を!?)


エミーリアは、掃除の手を止め、息を潜めて、その信じられない会話に聞き耳を立てていた。彼女の好奇心旺盛な性格は、この一大事を見過ごすことを許さない。ライナー先生が語る、アリアの「声聞魔法」がもたらした奇跡、そして王家からの厚い感謝の言葉。それは、エミーリアにとって、まるで物語の中の出来事のように、心躍る内容だった。


「アリア様は……やっぱり、森の精霊様だったんだわ!」


エミーリアは、興奮冷めやらぬまま、掃除道具を放り出し、控えの間へと駆け戻った。


控えの間では、老メイドのマリアや、料理人のグレゴリオ、庭師のフィンが、それぞれの休憩時間を過ごしていた。エミーリアは、息を切らしながら、大声で叫んだ。


「皆様!大変です!アリア様が、王宮を救ったそうですよ!」


エミーリアの叫びに、控えの間は一瞬にして静まり返った。マリアは、持っていたお茶をこぼしそうになり、グレゴリオは、パンを焼く手を止めた。フィンも、無言でエミーリアに視線を向けた。


「あの、王宮に魔物が出た時、アリア様が小鳥さんたちから情報を聞いて、女王陛下に伝えたんですって!それで、国王陛下からも、女王陛下からも、先代の王様からも、感謝の言葉をいただいたそうですわ!王家の方が、アリア様に頭を下げたって!」


エミーリアは、興奮冷めやらぬまま、書斎で聞いた話を、ありのまま、しかし抑えきれない興奮を乗せてまくし立てた。


その言葉に、控えの間は、一瞬の静寂の後、大騒ぎになった。


「なんだって!アリア様が、王宮を救っただと!?」


グレゴリオが、驚きに目を見開いた。


「まあ、アリア様が、そんな偉大なことを……」


マリアは、感動のあまり、目に涙を浮かべた。


「あの、小鳥たちの声が……本当に、王宮まで届いたのか……」


フィンは、アリアの魔法の力を、改めて痛感していた。


リンドバーグ家の使用人たちは、皆、アリアの「家内放送」を日課として楽しんでいたが、まさかそれが王宮の危機を救うほどの力を持つとは、夢にも思っていなかったのだ。屋敷中は、あっという間に、アリアの武勇伝とも言える噂で持ちきりになった。


その日の夕食時。アリアは、いつものように食卓についた。アレクサンダーとエリザベスは、娘の偉業を誇らしく思いながらも、周囲の反応を気にしていた。しかし、その日の食卓には、普段とは少し違う光景が広がっていた。


アリアの前に置かれた皿には、彼女の大好物である、甘く煮込んだ森の木の実のタルト、そして、普段はめったに出ない、珍しい魚のフライが並んでいた。


「まあ、これ……」


アリアは、目を丸くして、自分の好物が並んでいることに気づいた。


「アリア様。貴女様が王宮を救ってくださったお礼に、料理人が腕によりをかけて作ったそうですよ」


エリザベスが、微笑みながらアリアに言った。


料理人のグレゴリオは、厨房の奥で、少し照れくさそうにしていた。ぶっきらぼうな彼だが、アリアの「家内放送」が提供する情報や歌声には、日頃から心を癒されていた。そして、今回、王宮の危機を救ったと聞いて、心からの感謝を込めて、アリアの好物を作ってくれたのだ。


アリアは、温かい家族と、そして感謝の気持ちでいっぱいの使用人たちに囲まれ、好物をゆっくりと味わった。王宮の危機を救ったという大きな出来事の裏で、リンドバーグ家という小さな世界では、アリアへの感謝と愛情が、温かい食事と共に、深く深く満ちていた。アリアの「声」は、この家の人々の心を動かし、繋ぎ、そして温かい絆を育んでいたのである。

ストックを大分消化してみましたが皆様お楽しみ頂けたでしょうか?


またの投稿お待ち下さい

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