父と母の驚愕、娘の真価
王宮での滞在を終え、アリアがライナー先生と共にリンドバーグ家へと戻ってきて数日後、アレクサンダーとエリザベスは、ライナー先生から王宮での出来事について、詳細な報告を受けていた。書斎には、アレクサンダー、エリザベス、そしてライナー先生が、厳粛な面持ちで向き合っていた。アリアは、報告の間、自分の部屋で待機するよう言われていた。
「アレクサンダー様、エリザベス様。王宮での魔物騒動につきまして、アリア様が果たした役割について、ご報告申し上げます」
ライナー先生は、そう言って、深々と頭を下げた。彼の表情は、普段の穏やかさとは異なり、真剣そのものだった。
「ライナー先生。アリアは、無事だったのですね?フローラ王女殿下は?」
エリザベスは、娘の身の安全と、王女の安否を気遣い、不安げな声で尋ねた。
「はい、お二人ともご無事でございます。フローラ王女殿下も、アリア様がご一緒でいらっしゃったことを、大変喜んでいらっしゃいました」
ライナー先生の言葉に、エリザベスは安堵のため息をついた。
そして、ライナー先生は、王宮で起こった魔物騒動の全貌を、詳細に語り始めた。王宮の裏の森から立ち上る瘴気、結界の崩壊、魔物の侵入、そして女王と騎士団、魔法師団による迎撃。その全てを、克明に報告した。
「そして、この危機を未然に察知し、女王陛下に警告を発したのは、アリア様でございます」
ライナー先生の言葉に、アレクサンダーとエリザベスは、驚きに目を見開いた。
「アリアが……?一体どうやって?」
アレクサンダーは、信じられないといった様子で尋ねた。彼らは、アリアが〇〇村の魔物の情報を動物たちから得たことは知っていたが、まさか王宮の危機まで察知するとは、想像もしていなかったのだ。
「アリア様が、女王陛下のご提案で、小鳥たちをお呼びになった際、集まった小鳥たち、特に一羽のカラスから、王宮の裏の森に邪悪な瘴気が満ちており、魔物が出現する危険がある、という緊急の情報を得たのです」
ライナー先生は、アリアの「声聞魔法」が、ただの動物との会話ではなく、周囲の魔力の異変を察知し、それを動物たちが情報として伝える能力であることを、改めて説明した。
「女王陛下は、アリア様の言葉を信じ、即座に騎士団を派遣されました。その結果、魔物が王宮に侵入する前に、迅速な対応が可能となり、王宮は甚大な被害を免れることができたのです」
ライナー先生の報告は、アリアの「声聞魔法」が、王国の運命を左右するほどの、重要な力であることを示していた。アレクサンダーは、口を半開きにして、その事実に言葉を失っていた。
「アリアが……王宮を救った、と申すのか……」
エリザベスは、感動と、そして誇らしさのあまり、目に涙を浮かべた。かつて「落ちこぼれ」と蔑まれてきた娘が、王宮の危機を救うほどの存在になっていたとは。
「はい。そして、その功績に対し、国王陛下、女王陛下、そして先代の王陛下より、直接、アリア様への感謝の言葉が贈られました」
ライナー先生は、そう告げると、三人の王族がアリアに頭を下げたという、信じられない光景についても語った。
アレクサンダーは、震える手で顔を覆った。彼の脳裏には、幼い頃のアリアが、魔力測定器の低い数値に肩を落としていた姿が蘇る。そして、自分が「落ちこぼれ」だと心の中で決めつけ、向き合おうとしなかった過去の自分への後悔が込み上げてきた。
「私は……私は、なんと愚かだったのだ。アリアの才能を、見誤っていた……」
アレクサンダーの声には、深い自責の念が込められていた。
エリザベスは、そんな夫の肩に手を置き、ライナー先生に問いかけた。
「ライナー先生。アリアの魔法は、今後、どのように扱われるのでしょうか?王宮に、その存在が知られてしまったのなら……」
エリザベスは、娘の身の安全を案じていた。
「ご安心ください、エリザベス様。国王陛下、女王陛下は、アリア様の魔法を『王国の安全を守るための、かけがえのない力』として、高く評価してくださいました。フローラ王女殿下も、アリア様との友情を深く願っていらっしゃいます。今後は、王家の庇護のもと、アリア様は、その才能を存分に発揮できることとなるでしょう」
ライナー先生の言葉に、アレクサンダーとエリザベスは、ようやく安堵の息をついた。アリアの「声聞魔法」は、もはや秘密裏に守られるべき「異端」の力ではなく、王国の公的な守護者として、その存在を認められたのだ。
「アリア様は、この王国にとって、かけがえのない宝となるでしょう」




