王宮の守護者たち、危機を制す
王宮の裏の森から立ち上る瘴気、そして結界の崩壊は、王宮全体に緊急事態を告げていた。女王の迅速な判断により、護衛騎士団と魔法師団が即座に動員され、王宮の庭園に侵入しようとする魔物たちとの激しい戦いが始まった。
「結界の修復を急げ!魔法師団は魔物への攻撃を優先せよ!」
騎士団長は、冷静な指示を飛ばしながら、自らも剣を抜き、先陣を切って魔物へと斬り込んだ。彼の剣技は光のように鋭く、魔物の表皮を容赦なく切り裂いていく。
女王は、自身の持つ膨大な魔力を解放し、強大な攻撃魔法を放った。彼女の魔法は、まるで雷鳴のように轟き、魔物の群れを次々と薙ぎ倒していく。王族最強の魔法使いとしての威厳が、その場に満ち溢れていた。
魔法師団もまた、一斉に攻撃魔法を放った。炎の渦、氷の槍、風の刃。色とりどりの魔法が飛び交い、王宮の庭園は、一瞬にして戦場と化した。騎士団は、魔法師団の攻撃を支援するように、魔物の懐へと飛び込み、剣と盾で果敢に応戦する。
「陛下!結界の一部修復が完了しました!これ以上、魔物が侵入することはありません!」
魔法師団長が叫ぶと、女王は深く頷き、さらに強力な魔法を放った。
しかし、魔物の数は予想以上に多く、その瘴気は周囲の植物を枯らし、騎士や魔法使いの体力を蝕んでいく。疲労が蓄積し始め、戦況は膠着状態に陥りかけた。
その頃、客間では、アリア、フローラ王女、そしてライナー先生が、窓から外の戦況を固唾を飲んで見守っていた。アリアの肩に止まったカラスは、依然として外の様子を警戒するように鳴き続けている。
「……女王陛下、騎士団の皆様……頑張ってください……!」
フローラ王女は、不安げな表情で、祈るように呟いた。
「アリア様。貴女の情報があったからこそ、これほど早く対応できたのです。そうでなければ、王宮はもっと大きな被害を受けていたでしょう」
ライナー先生は、アリアにそう語りかけた。アリアの提供した情報が、王宮の危機を未然に防ぎ、被害を最小限に食い止める上で、いかに重要であったかを改めて認識していた。
そして、激しい戦いの末、王宮騎士団と魔法師団の連携攻撃が、ついに魔物の群れを壊滅させた。最後の魔物が、断末魔の叫びを上げて消滅すると、王宮の庭園には、静寂が戻った。瘴気はまだ残っていたが、その濃さは急速に薄れていく。
「皆様、ご苦労であった!怪我人はいないか!?」
女王の声が響き渡る。騎士や魔法使いたちは、疲労困憊の様子ながらも、王宮の危機を救ったことに、安堵の表情を浮かべていた。
女王は、その足で客間へと戻ってきた。フローラ王女は、無事に戻ってきた女王の姿を見ると、安堵のあまり駆け寄った。
「お母様!ご無事でよかったですわ!」
女王は、フローラ王女を優しく抱きしめると、アリアとライナー先生の方に視線を向けた。彼女の顔には、疲労の色が見て取れたが、その瞳には、深い感謝の念が宿っていた。
「アリア・リンドバーグ。貴女の警告のおかげで、王宮は甚大な被害を免れました。感謝いたします」
女王は、アリアに深々と頭を下げた。王国の最高権力者が、一介の貴族の娘に頭を下げる。その光景は、ライナー先生の目に、アリアの「声聞魔法」が持つ計り知れない価値と、王国の未来を大きく変える可能性を、改めて強く認識させた。
「えっ……いえ、そんな……」
アリアは、女王からの直接の感謝の言葉に、恐縮しきりだった。しかし、自分の魔法が、実際に王宮を守るために役立ったという事実に、深い喜びと、そして使命感を抱いた。
王宮の危機は去った。しかし、この日、アリアの「声聞魔法」は、王宮に深く刻み込まれた。彼女の「声」は、単なる貴族の噂話ではなく、王国の運命を左右する、確かな情報源として、その真価を証明したのである。




