夕日の輝き、王宮への報告
リンドバーグ家を後にした王室の馬車は、王都へと続く道を静かに進んでいた。馬車の窓からは、西の空を赤く染める夕日が差し込み、車内を暖かく照らしている。
フローラ王女は、掌に握りしめた虹色の響鳴石を、その夕日にかざしていた。光を受けるたびに、石は七色の輝きを放ち、まるで小さな虹が王女の手に宿ったかのようだ。その輝きを見つめながら、フローラ王女は、今日一日あった出来事を、一つ一つ鮮明に思い出していた。
アリアという、黒髪と真っ赤な瞳を持つ少女。控えめでありながらも、その心には揺るぎない優しさと、純粋な好奇心が宿っていた。庭で歌ったアリアの歌声は、王女の心を温かく包み込み、そして、無数の小鳥たちがアリアの周りに集まり、最終的には自分の肩や膝にも止まってくれた、あの奇跡のような光景。
(アリア様は、本当に「森の精霊に愛された少女」なのだわ……)
王宮での厳格な教育と、華やかな社交界の裏表を知るフローラ王女にとって、アリアの純粋な心と、自然との調和は、何よりも新鮮で、心を震わせるものだった。あの時、アリアが歌っていた優しい歌が、今も耳の奥で響いているようだった。
馬車が王宮へと到着し、フローラ王女は先代の王が待つ執務室へと向かった。先代の王は、孫娘の顔に普段以上の喜びと輝きが満ちていることに気づき、優しく微笑んだ。
「フローラ、おかえり。リンドバーグ家での滞在は、楽しかったかね?」
先代の王の問いかけに、フローラ王女は、はちきれんばかりの笑顔で頷いた。
「はい、おじい様!本当に、素晴らしい一日でしたわ!アリア様は、噂通り、いえ、噂以上に素晴らしい方でした!」
フローラ王女は、興奮冷めやらぬ様子で、今日リンドバーグ家で起こった出来事を、詳細に語り始めた。
「アリア様が庭で歌を歌われると、森中の小鳥たちが集まってくるのです!わたくしの肩にも、膝にも、小さな鳥たちが止まってくれて……!あんなに愛らしい光景、見たことがありませんでしたわ!」
フローラ王女は、その時の感動を伝えようと、身振り手振りを交えながら話した。そして、アリアから贈られた虹色の響鳴石を、大切そうに差し出した。
「そして、これはアリア様からの贈り物ですの!とても美しい響鳴石で、夕日に当てると、こんなにも七色に輝くのですわ!」
先代の王は、孫娘の純粋な喜びの表情と、虹色の響鳴石に目を向け、静かに頷いた。彼は、アリアの持つ「森の精霊に愛された少女」という噂が、単なる作り話ではないことを確信した。そして、その才能が、王族の娘であるフローラ王女に、これほどの感動と喜びを与えたことに、深く感銘を受けていた。
「うむ。それは、まことに素晴らしい贈り物だ。アリア殿は、確かに特別な力を持っておるようだ」
先代の王は、そう言うと、フローラ王女の頭を優しく撫でた。
「フローラ。アリア殿とは、これからも親交を深めなさい。彼女は、貴女にとって、きっと良い友人となるだろう」
「はい、おじい様!アリア様は、わたくしの大切な友人ですわ!」
フローラ王女は、満面の笑顔で答えた。彼女の心には、アリアとの友情と、虹色の響鳴石が、これからの王宮での生活に、新しい輝きを与えてくれる予感に満ちていた。




