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王女と魔女、庭園の邂逅

王宮からの通達を受けて数日後、ついにフローラ王女のリンドバーグ家への訪問の日がやってきた。屋敷は朝から慌ただしく、いつも以上に厳重な警備が敷かれ、使用人たちは皆、緊張した面持ちで準備に当たっていた。アリアもまた、真新しいドレスに身を包み、胸の高鳴りを抑えながら、玄関で王女を出迎えることになった。


やがて、王家の紋章を掲げた豪華な馬車が、リンドバーグ家の門をくぐり、玄関へと乗りつけた。馬車の扉が開き、まず護衛の騎士たちが降り立ち、次に、白いフリルが飾られた水色のドレスを纏ったフローラ王女が、優雅な足取りで降り立った。彼女の金色の髪は陽光を受けて輝き、空色の瞳は、好奇心に満ちていた。


「フローラ王女殿下、ようこそリンドバーグ家へ。このような栄誉、身に余る光栄にございます」


アレクサンダーが深々と頭を下げ、エリザベス、セレスティも恭しく挨拶を交わす。アリアは、その緊張感に包まれた空気に、思わず身を縮ませた。


フローラ王女は、バルドリックとセレーネから聞いていたアリアの姿を、真っ先に探し当てた。そして、アリアの黒髪と真っ赤な瞳を見つけると、にこやかに微笑み、彼女の方へと歩み寄った。


「貴女が、アリア・リンドバーグ様でいらっしゃいますのね。お目にかかれて光栄ですわ」


フローラ王女の、気品がありながらも親しみやすい声に、アリアは少しだけ緊張が和らいだ。


「フローラ王女殿下。アリア・リンドバーグと申します。ようこそ、おいでくださいました」


アリアは、精一杯の礼儀をもって挨拶を返した。その肩には、いつものようにポルンが止まっており、フローラ王女は、その白いメンフクロウに、興味深そうな視線を向けた。


「まあ、可愛らしいフクロウさん。貴女の使い魔ですの?」


フローラ王女は、ポルンに優しく語りかけた。ポルンも、王女の澄んだ声に、警戒心を抱くことなく、小さな鳴き声で応えた。


その後、客間で紅茶を楽しみ、形式的な挨拶を交わした後、フローラ王女は、アリアと共に庭へ出ることを望んだ。彼女の真の目的は、アリアの「森の精霊説」の噂が真実であるかを、この目で確かめることにあった。アレクサンダーは、ライナー先生に、もしもの時には説明を頼むよう念を押していた。


庭の奥、大きな古木の根元で、アリアとフローラ王女は、二人の護衛騎士と、ライナー先生、そしてセレーネに見守られながら、向かい合って座った。最初は、互いに少し緊張していたが、フローラ王女の飾らない質問が、その距離を縮めていった。


「アリア様は、お庭でどんな遊びをなさいますの?わたくし、王宮では、あまり自由に遊ぶことができませんから、羨ましいですわ」


フローラ王女は、子供らしい素直な好奇心で尋ねた。


「私は……お庭で、小鳥さんたちと、お話したり、歌を歌ったりしています。あと、森へ行って、ポルンやフクロウさんたちと、新しい花や、珍しい木の実を探したり……」


アリアは、自分の日常を、飾らない言葉で語った。フローラ王女は、アリアの言葉一つ一つに、目を輝かせながら耳を傾けた。


「まあ、小鳥さんたちとお話できるのですか!素敵ですわ!どんなお話をなさるのですか?」


「えっと……森の奥に、美味しい木の実がたくさんなっているよ、とか。最近、新しい鳥さんが庭に来たよ、とか……」


アリアは、小鳥たちとの他愛もない会話の内容を話した。フローラ王女は、その話に、心から驚き、そして楽しんでいた。王宮の厳格な教育や、形式的な会話ばかりの生活とは違い、アリアの言葉は、彼女の心に新鮮な風を吹き込んだのだ。


「王宮では、誰もそんなお話をしてくれませんわ。アリア様は、本当に特別な方ですわね」


フローラ王女は、アリアに優しく微笑んだ。その笑顔は、王女という立場を忘れさせるほど、純粋な少女のそれだった。


アリアも、フローラ王女の飾らない人柄に、徐々に打ち解けていった。王女は、絵本の話や、王宮で飼われている愛らしい小動物たちの話をしてくれた。アリアは、王女が話す王宮の生活に興味津々で、二人の間には、年齢の近い少女たちならではの、穏やかな空気が流れ始めた。


ライナー先生は、二人の様子を離れた場所から静かに見守っていた。フローラ王女の純粋な好奇心が、アリアの心をゆっくりと開いていることを感じ取っていた。この他愛もない会話の時間が、やがてアリアの「声聞魔法」が、王族の理解を得るための、大切な一歩となることを、ライナー先生は確信していた。

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