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王女の来訪、リンドバーグ家への通達

バルドリックとセレーネの邸宅での滞在を終え、先代の王とフローラ王女は王宮へと戻っていった。しかし、フローラ王女のアリアへの関心は、バルドリックの予想以上に深かった。数日後、リンドバーグ家へと、王宮からの正式な通達が届いた。フローラ王女が、アリア・リンドバーグに会うため、近々リンドバーグ家を訪問したいという内容だった。


その通達を受け取ったアレクサンダーは、驚きと困惑を隠せない。王族からの訪問は、貴族にとっては最高の栄誉であると同時に、細心の注意を要する事態でもある。ましてや、その目的が、魔力平均以下の「落ちこぼれ」とされてきた娘、アリアへの面会であるとすれば、なおさらだった。


アレクサンダーは、すぐにバルドリックに連絡を取った。王都のバルドリックの邸宅で、二人は向き合っていた。


「お父様。フローラ王女殿下が、アリアに会うために、リンドバーグ家を訪問されるとのこと。これは一体……」


アレクサンダーは、不安げな表情でバルドリックに尋ねた。


バルドリックは、静かに紅茶を一口飲むと、深いため息をついた。


「やはり、そうなったか。フローラ王女は、アリアの『森の精霊説』の噂に、並々ならぬ興味を抱いているようだ。直接、アリアに会って、その真偽を確かめたいのだろう」


「しかし、お父様。アリアの『声聞魔法』は、まだ外部には……特に王族の方々に、軽々しくお見せすべきものではないかと」


アレクサンダーは、騎士団長からの警告を思い出し、アリアの身を案じた。未知の魔法は、時に危険視され、排斥される対象となり得る。それが、王族の目に触れるとなれば、その影響は計り知れない。


バルドリックは、アレクサンダーの懸念を理解していた。しかし、王族からの訪問要請を、貴族であるリンドバーグ家が拒否することは、事実上不可能に近い。


「それは分かっている。だが、王族の願いを拒むことはできぬ。それに、今回の訪問は、アリアの才能を、より広く理解してもらう好機となる可能性も秘めている」


バルドリックの言葉に、アレクサンダーは複雑な表情を浮かべた。好機と危険、二つの可能性が、彼の脳裏を駆け巡る。


「ライナーも、アリアの『声聞魔法』が、王国の情報伝達のあり方を変え得ると、熱心に語っていた。もし、王族の方々がその価値を認めれば、アリアの才能は、正当に評価され、守られることにも繋がるだろう」


バルドリックは、ライナーがアリアの能力の可能性について語っていたことをアレクサンダーに伝えた。ライナーは、アリアの「放送」が、災害時の情報伝達や、遠隔地との連絡手段として、既存の魔導具を遥かに凌駕する効率を持つことを確信していた。


「しかし、万が一、アリアの能力が『異端』と見なされた場合……」


アレクサンダーの不安は尽きない。


バルドリックは、そんなアレクサンダーの肩を力強く叩いた。


「心配するな。私がいる。そして、ライナーもいる。彼は、アリアの魔法を最も深く理解している者だ。王女殿下への説明は、ライナーに任せるのが良いだろう」


バルドリックは、長年の経験と人脈、そしてライナーへの信頼を以て、アリアを守ることを決意していた。彼は、フローラ王女の純粋な好奇心が、アリアの「声聞魔法」が持つ真の価値を世界に示す、重要な鍵となると直感していたのだ。


「アレクサンダー。準備を怠るな。アリアにも、このことを伝え、心構えをさせておくように。そして、決して臆することのないよう、言い聞かせよ」


バルドリックの言葉に、アレクサンダーは深く頷いた。王族の訪問は、アリアの人生、そしてリンドバーグ家の運命を大きく左右する出来事となるだろう。アリアの「声聞魔法」は、いよいよ、王族の目の前で、その真価を問われる時が来たのだった。

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