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王都の噂、妹は精霊?

貴族院での最初の試験を首席で終え、学内での評価を確固たるものにしたセレスティは、日々の勉学に励んでいた。そんなある日の昼休み、食堂で友人たちと共に昼食をとっていたセレスティの耳に、意外な噂が飛び込んできた。


エレノア・クロフォードが、目を輝かせながら話し始めた。


「ねえ、セレスティ様。貴女様のご実家の庭に、森の精霊が住んでいるという噂、ご存じ?」


エレノアの言葉に、セレスティは思わずフォークを持つ手を止めた。


「森の精霊、ですって?一体、何のことかしら?」


セレスティが問い返すと、ベアトリス・ハートフィールドが、少し真剣な表情で続けた。


「私も聞きましたわ。なんでも、リンドバーグ家のお嬢様が、庭で小鳥たちと戯れていらっしゃると、まるで魔法のように、無数の小鳥たちが集まってくるのだとか」


キャサリン・ウッドブリッジも、穏やかな声で続けた。


「ええ、まるで、お嬢様が森の精霊に愛されているかのような光景だと、母が話しておりましたわ。心を清める歌を歌われると、もっと多くの小鳥たちが集まってくるのだとか」


友人たちの言葉は、先日エリザベスのお茶会で起こった「小鳥事件」の噂が、王都の貴族たちの間で広まっていることを示唆していた。セレスティは、あの日の庭での光景を思い出し、それが噂としてここまで広がっていることに驚きを隠せない。アリアが、ごく微量の魔力を声に乗せて歌っていたことは知っているが、それが「森の精霊」とまで言われるとは。


すると、ルシア・ヴァーノンが、冷静な口調で口を開いた。


「私も、兄からその話を聞きました。我が家の父も、その噂に興味を示しております。魔力の多寡に依らず、自然界の生命を惹きつける力。もしそれが事実ならば、既存の魔法理論では説明しきれない現象です」


ルシアの言葉は、単なる噂話としてではなく、学術的な探求の対象として、アリアの能力が注目されていることを示していた。


セレスティは、友人たちの言葉を聞きながら、アリアの姿を思い浮かべた。黒髪に真っ赤な瞳、そして平均以下の魔力量。「落ちこぼれ」と蔑まれていた妹が、今や「森の精霊に愛された少女」として、王都の貴族たちの間で噂になっている。


(アリア……貴女の魔法は、こんなにも、人々の心を惹きつける力を持っているのね)


セレスティは、妹の才能が、単なる実用的な能力に留まらず、人々の心に感動や神秘的な感覚を与える力を持っていることを改めて感じた。同時に、レオ兄様がアリアの能力を認め始めたことも、この噂が影響しているのかもしれない、と思った。


「アリアは、とても優しい子ですから。きっと、小鳥たちも、その優しさに惹かれているのでしょう」


セレスティは、控えめにそう答えた。彼女は、アリアの「声聞魔法」や「家内放送」について、まだ詳しく話すつもりはなかった。しかし、妹の才能が、王都の貴族たちの間で、静かに、しかし確実に注目され始めていることに、喜びと、そして今後の展開への期待を感じていた。

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