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王都の再会、兄の変貌

セレスティの貴族院入学式が、いよいよ王都で執り行われる日となった。リンドバーグ家からは、アレクサンダーとエリザベス、そしてアリアが参列するため、早朝から馬車で王都へと向かった。アリアは、生まれて初めての王都の賑やかさに目を奪われながらも、久々に会う姉と兄への期待と、少しの不安で胸がいっぱいだった。


貴族院の広大な敷地内は、各地から集まった貴族たちでごった返していた。新入生の晴れやかな制服と、それに劣らぬ華やかな貴族たちのドレスが、会場を彩る。式典は厳かに執り行われ、新入生を代表して誓いの言葉を述べるセレスティの姿は、ひときわ輝いて見えた。アリアは、その誇らしい姉の姿に、目に涙を浮かべた。


式典が終わり、家族が集まる控室へと向かうと、そこには既に、バルドリックとセレーネが待っていた。そして、その傍らには、貴族院の制服を凛と着こなしたレオの姿があった。以前よりも背が伸び、顔つきも少し大人びたレオは、堂々とした雰囲気を纏っていた。


「おじい様、おばあ様」

「レオ兄様!」


アリアは、懐かしい顔ぶれに、思わず駆け寄った。


「セレスティ、入学おめでとう。見事な宣誓だった」


レオは、まずセレスティに視線を向け、以前のようなぶっきらぼうな口調ではなく、素直な称賛の言葉を贈った。セレスティは、兄の言葉に驚きつつも、嬉しそうに微笑んだ。


そして、レオの視線がアリアへと向けられた。アリアは、かつて「落ちこぼれ」と罵られた記憶が蘇り、一瞬身構えた。しかし、レオの表情には、以前のような冷たい嘲りはなく、代わりにどこか複雑な、しかし穏やかな感情が浮かんでいた。


「アリアも、元気そうだな」


レオの言葉は、以前の彼からは想像できないほど、穏やかで、そしてどこか気遣うような響きがあった。アリアは、その変化に驚き、目を見開いた。


「レオ兄様……」


レオは、さらに言葉を続けた。


「お前も、随分と賑やかなことをしていると聞いたぞ。庭に、森の小鳥たちを全て集めてしまうとはな」


レオの言葉には、以前のような軽蔑の色は一切なく、むしろその声には、アリアの特別な能力に対する、ある種の驚きと、僅かながら尊敬の念さえ感じられた。彼は、王都の貴族院で、友人であるセドリック・ヴァーノンや他の学友たちから、エリザベスのお茶会での「小鳥事件」の噂を聞いていたのだ。その噂は、王都の社交界で、アリアが「森の精霊に愛された少女」として、半ば伝説のように語られ始めていた。


アリアは、その噂がレオの耳にまで届いていることに驚きつつも、兄が自分を蔑むような目で見ていないことに、安堵と、じんわりとした喜びを感じた。


「あの……その、はい。みんな、私の歌を聞いてくれるんです」


アリアがどもりがちに答えると、レオは小さく頷いた。


「そうか。お前の声には、特別な力があるのかもしれないな」


アレクサンダーとエリザベスは、レオのこの変化に、驚きと安堵の表情を浮かべていた。特にアレクサンダーは、息子が娘の才能を認め始めたことに、目を見張るものがあった。バルドリックは、孫たちの様子を満足げに見守り、セレーネは、アリアとレオの間で交わされた、心温まるやり取りに、優しく微笑んだ。


セレスティは、アリアの隣に立ち、レオの方へ視線を向けた。


「レオ兄様。アリアは、本当に素晴らしい才能を持っているのよ。その魔法は、きっとこの世界を……」


セレスティがそこまで言いかけると、レオは小さく咳払いをした。


「分かっている。以前のお前たちへの態度は、不甲斐なかったと反省している。貴族院で、多くの世界を見て、私も少しは成長したつもりだ」


レオは、素直に自分の過ちを認めるような言葉を口にした。その言葉に、セレスティは目を丸くし、アリアは驚きを隠せない。傲慢でプライドが高かったレオが、ここまで素直な言葉を口にするとは、誰も予想していなかったのだ。


久々の家族の再会は、セレスティの入学という晴れやかな出来事だけでなく、レオの姉妹に対する態度の劇的な変化という、もう一つの大きな喜びをもたらした。アリアは、レオ兄様との間に、これまでにはなかった、新しい関係性の始まりを感じていた。王都での一日が、アリアの心に、温かい希望の光を灯したのだった。

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