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古参の賢者と、新たな師の驚き

バルドリックとセレーネ、そしてライナー・グレンジャーは、しばらくの間、リンドバーグ家で過ごすことになった。バルドリックは、孫娘の「特別な才能」について、より深く見極めるために。セレーネは、愛する孫娘の成長を間近で見守るために。そしてライナーは、アリアの「声聞魔法」という未知の現象を、学術的な探求の対象として研究するために。


リンドバーグ家には、王都からの客人たちが滞在することで、これまでとは異なる活気が生まれていた。特に、ライナー・グレンジャーは、到着して早々にアリアの部屋へと案内された。バルドリックが、まずはライナーにアリアの「情報司令室」を見せるべきだと判断したからだ。


部屋に入ったライナーは、壁一面に広がる二枚の大きな黒板を見て、その銀縁の眼鏡の奥の瞳を大きく見開いた。一枚の黒板には、地形が正確に描かれた森の地図。もう一枚には、色とりどりのチョークで、びっしりと書き込まれた魔物の情報、珍しい植物の自生地、隠れた泉の場所、迷子の動物の目撃情報、そして日付まで。


「これは……驚きました。まさか、これほど詳細に情報が整理されているとは」


ライナーは、感嘆の声をもらした。彼は、チョークが握られたまま机に突っ伏して眠っていたアリアの、あの黒板の光景をメイドのエミーリアから聞いていた。しかし、実際に目にすると、その情報量の多さと正確さに圧倒されたのだ。


「これらは全て、アリア様が、動物たちから得た情報、ですか?」


ライナーがアリアに尋ねると、アリアは少し照れながら頷いた。


「はい……ポルンや、森のフクロウさんたち、それに、庭の小鳥たちが教えてくれたこと、全部ここに書いています」


その言葉に、ライナーは黒板に近づき、書かれた内容を一つ一つ丁寧に確認していった。〇〇村の魔獣騒動で得られた情報と、黒板に書かれた内容が完全に一致していることを確認すると、彼の知的な顔に、興奮の色が浮かび始めた。


「これは……!従来の魔法理論では説明しきれない現象ですね。魔力の強弱とは異なる、情報を受信する、あるいは『理解する』ことに特化した、新たな魔法の可能性……」


ライナーは、まるで子供のように目を輝かせながら、独り言のように呟いた。彼は、アリアの能力を「異端」として恐れるのではなく、純粋な探求心を持って、その原理を解明しようとしていた。


その様子を後ろから見守っていたバルドリックは、満足げに頷いた。彼がライナーを連れてきたのは、まさにこのためだった。アリアの才能を、正しく理解し、育てられるのは、彼のような柔軟な発想と、深い知識を持つ者だけだと確信していたからだ。


「ライナー、君なら、この娘の才能を、正しく導いてくれるだろう」


バルドリックの言葉に、ライナーは振り返り、深々と頭を下げた。


「バルドリック様のご期待に沿えるよう、全力を尽くさせていただきます。アリア様、これから貴女の魔法について、様々なことを教えていただきたい」


ライナーの言葉に、アリアは不安な気持ちが和らぐのを感じた。自分の魔法を、正面から受け止めてくれる人が現れたことに、心から安堵したのだ。


この日から、リンドバーグ家では、アリアの「声聞魔法」と、ライナーによるその研究が、本格的に始まることになった。そして、その才能が、やがて王都、ひいては世界へと広がる物語の、確かな足音が、静かに響き始めていたのである。

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