騎士団の報告、真実の響き
エリザベスの報告を受けたアレクサンダーは、事の重大さにすぐに気づいた。娘の言葉とはいえ、領地の安全に関わる情報である。彼は即座に騎士団長を呼び出し、〇〇村周辺の警戒と、魔物の出現状況の確認を命じた。騎士団は、その日のうちに〇〇村へと向かっていった。
その間、リンドバーグ家は、どこか落ち着かない雰囲気に包まれていた。エリザベスは、アリアの部屋から黒板を運び出させ、書斎に設置させた。そして、再びアリアに、小鳥たちから得た情報を詳しく尋ねた。
「アリア、本当に、どこからそんな情報を得たのですか?小鳥たちが、話すだなんて……」
エリザベスは、まだ半信半疑だったが、娘の真剣な表情と、黒板に書かれた詳細な情報を見るうちに、ただの子供の空想ではないことを感じ始めていた。アリアは、ポルンとの「思念術」のこと、そして森のフクロウたちや小鳥たちと心を通わせるようになった経緯を、たどたどしくも懸命に説明した。
セレスティも、アリアのそばに寄り添い、妹の言葉に耳を傾けていた。彼女は、アリアの魔法が単なる音の伝達だけでなく、もっと深い「理解」の力を持っていることを、漠然とではあるが感じ取っていた。
数時間後、領地を巡回していた騎士団の使いが、馬を飛ばして屋敷へと戻ってきた。書斎で待機していたアレクサンダーとエリザベス、そしてセレスティとアリアの元へ、その報告が伝えられた。
「団長、ただいま戻りました!〇〇村の状況を確認したところ、畑が荒らされているのは事実でございます!」
騎士は息を切らしながら報告した。
「魔物の足跡も確認されました。以前からこの地域では見られない種類の魔物で、どうやら森の奥深くから移動してきたようです。村人たちも、最近畑が荒らされていることに困惑しておりました」
騎士の報告は、アリアの黒板に書かれていた情報と、寸分違わぬ内容だった。畑の荒らされ方、魔物の種類、そしてその出現場所まで。
アレクサンダーは、その報告を聞き、驚きに目を見開いた。
「まさか……アリアの情報が、これほどまでに正確だったとは……」
彼は、黒板に書かれた「危険」という文字に、改めて目を向けた。娘の魔力は平均以下。それは疑いようのない事実だった。しかし、彼女が持つこの「声を聞く力」は、既存の魔法の概念を覆すものではないか。
エリザベスもまた、その事実に衝撃を受けていた。
「アリア……あなた、本当に……」
彼女は、娘の肩をそっと抱き寄せた。ただの「おねだり」だと思っていた黒板が、こんなにも重要な情報を伝えていたのだ。アリアの無垢な瞳に宿る、真剣な輝き。それが、彼女が持つ特別な才能の証であることを、エリザベスは初めて心から理解した。
セレスティは、アリアの手を強く握った。妹の持つ魔法の可能性を、誰よりも早く信じていた彼女は、その才能が認められたことに、深い喜びを感じていた。
「アリア、あなたは素晴らしいわ。この魔法は、きっとたくさんの人を助けることができる」
アリアは、家族の驚きと、セレスティの称賛に、少し戸惑いながらも、心の中でポルンに語りかけた。
(ポルン、私たちの魔法が、みんなの役に立ったみたい!)
ポルンも、アリアの心の喜びを感じ取り、嬉しそうに小さな鳴き声で応えた。
アレクサンダーは、深くため息をつくと、もう一度アリアと黒板を交互に見た。魔力量が全てではない。この娘の持つ能力は、危険を察知し、未然に防ぐ、かけがえのない力となり得る。彼は、これまでのアリアへの評価を改めざるを得なかった。
「アリア……この情報、これからも、集めてくれるか?」
アレクサンダーの言葉には、娘への信頼と、一人の魔法使いとしての敬意が込められていた。アリアは、力強く頷いた。
「はい、お父様!みんなの役に立てるなら、私、頑張ります!」
アリアの「声聞魔法」は、家内放送というささやかな活動から、領地の安全を脅かす魔物の情報を伝えるという、より大きな使命へとその一歩を踏み出した。この日、リンドバーグ家は、アリアの真の才能を初めて認識し、その未来に大きな期待を抱いたのだった。




