森の仲間たちと、名を持つ翼の誇り
アリアの「家内放送」は、リンドバーグ家の日常に、穏やかな彩りをもたらし始めていた。午後四時になると、使用人たちは自然と手を休め、家族もそれぞれの部屋で、アリアの物語や歌に耳を傾けるようになった。その変化は、アリア自身の自信にも繋がり、彼女の表情は以前よりも明るくなっていた。
ある晴れた日の午後、アリアは次の放送で語る物語の着想を得るため、ポルンを連れて森へ散策に出かけた。緑豊かな森は、相変わらず神秘的な雰囲気に満ちている。アリアは、ポルンと心の中で会話しながら、足元の草花や木々の様子を注意深く観察していた。
(アリア、あっちだ。そっちに、僕の仲間がいる)
ポルンが心の声で伝えると、アリアは頷き、ポルンが示す方向へと足を向けた。森の奥深くへと進むと、大きな樫の木の枝に、三羽のフクロウが止まっているのが見えた。皆、ポルンと同じメンフクロウだが、ポルンのような真っ白なアルビノではなく、一般的な茶色と白の羽毛を持つフクロウたちだった。
(みんな!)
ポルンが嬉しそうに翼を広げて飛び立つと、三羽のフクロウたちも、ポルンに気づいて羽ばたき、ポルンの周りを旋回した。アリアは、その様子を温かい眼差しで見守った。
「こんにちは、フクロウさんたち。ポルンのお友達なのね」
アリアが優しく話しかけると、フクロウたちは警戒することなく、アリアの周りをゆっくりと飛び回った。ポルンがアリアの心を通じてフクロウたちと会話しているのが、アリアには感じられた。
(元気だったか!)
(怪我はもう大丈夫なのか?)
(お前、あそこで見かけなくなったから心配してたんだぞ!)
フクロウたちが次々にポルンに話しかける。ポルンは、嬉しそうに羽を広げ、アリアの肩に着地した。
(みんな、ありがとう。もう大丈夫だよ。この子が、僕を助けてくれたんだ)
ポルンは、アリアの心を通じて、自分の状況を仲間たちに伝えた。フクロウたちは、アリアを見上げて、興味深そうに首を傾げた。
(この人間が、お前を助けたのか?)
(へえ、変わった色の子だと思ったけど、優しいんだな)
(お前、なんだか前よりも元気になったみたいだな!)
フクロウたちが口々に話すと、ポルンは少し得意げに胸を張った。
(うん!それに、僕には、名前がついたんだ!)
(名前?)
(なんだ、名前って?)
(いいなぁ、僕たちには名前なんてないのに……)
フクロウたちは、ポルンの言葉に驚き、少し羨ましそうな声を上げた。この世界の生き物にとって、「名前」を持つことは、特別なことだった。それは、誰かに認められ、大切にされている証拠なのだ。
(うん、この子が、僕に『ポルン』って名前をくれたんだ!)
ポルンは、誇らしげにアリアを見上げた。アリアも、ポルンの心が喜びに満ちているのを感じ、優しく頭を撫でた。
「ポルンは、私にとって大切な家族よ。みんなも、ポルンの大切な友達なのね。嬉しいわ」
アリアがフクロウたちに笑顔を向けると、彼らは警戒心を解き、枝に止まって、アリアとポルンを見つめた。
(僕たちも、お前みたいに名前、欲しいなぁ)
(なあ、人間のお嬢ちゃん、僕たちにも名前をくれないか?)
(どんな名前がいいかなぁ……)
フクロウたちが、そわそわと身を寄せ合って相談し始める。アリアは、その可愛らしい様子に思わず笑みがこぼれた。
「ええ、もちろんよ。あなたたちも、ポルンの大切な友達だもの。そうね……」
アリアは、フクロウたちの羽の色や、それぞれが持つ雰囲気を見て、名前を考えた。
「あなたは、夕焼けの空のような色だから、『トワイライト』はどうかしら?」
アリアが最初に指さしたのは、茶色がかった羽を持つ、少し大人しそうなフクロウだった。
(トワイライト……!うん、いい名前だ!)
そのフクロウは、嬉しそうに目を輝かせ、小さな声で鳴いた。
「そしてあなたは、元気いっぱいで、飛び回るのが好きそうだから、『ウィンド』」
次に、活発そうなフクロウに声をかける。
(ウィンド!僕にぴったりだ!)
ウィンドは、ぴょんぴょんと枝の上で跳ねて見せた。
「そして、あなたは、とても賢そうだから、『セージ』」
アリアが最後に指さしたのは、少し思慮深そうなフクロウだった。
(セージ……なるほど、悪くない)
セージは、ゆっくりと首を傾げ、アリアに感謝するように鳴いた。
(やったー!僕たちも名前がついたぞ!)
(ポルンと同じだ!)
(嬉しいな、僕たちも名前持ちだ!)
三羽のフクロウたちは、新しい名前を呼んで、歓喜の声を上げた。森の中に、彼らの喜びの鳴き声が響き渡る。ポルンも、仲間たちが名前を持てたことを、心から喜んでいるようだった。
「これで、みんなも私の大切な友達ね。これからも、よろしくね、トワイライト、ウィンド、セージ」
アリアは、フクロウたちに優しく語りかけた。その言葉に、フクロウたちは、アリアがただの人間ではないことを感じ取っていた。彼女は、森の生き物たちの心を理解し、彼らに寄り添うことができる、不思議な存在なのだと。




