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古老の牙、公爵邸への雷鳴

セリーナ・ブライアウッドの停学処分、そしてブライアウッド公爵家との潜在的な対立に、アレクサンダー・リンドバーグは深く頭を悩ませていた。公爵家と正面から衝突することは避けたい。しかし、愛する娘が傷つけられたことは、決して許せない。父としての怒りと、当主としての冷静な判断の間で、彼は葛藤していた。


しかし、アレクサンダーがそんな思いを抱いているとはつゆ知らず、王都では、全く別の動きが始まっていた。


ブライアウッド公爵家が、ユリウス王子の裁定に不満を抱き、何らかの報復を企てるであろうことを予見していたのは、バルドリック・リンドバーグも同じだった。彼は、孫娘アリアの「王国放送」が王国全体の情報インフラとなる今、ブライアウッド家のような大貴族が、その基盤を揺るがすような行動に出ることを、決して看過できなかった。何よりも、愛する孫娘セレスティが傷つけられたという事実が、バルドリックの心を深く怒らせていた。


だが、バルドリックは、アレクサンダーのように、公爵家との正面衝突を躊躇するような人物ではなかった。彼は、長年王国の重鎮として辣腕を振るい、かつては王国の騎士として戦場を駆け抜けた猛者だ。彼には、公爵家を黙らせるための「切り札」があった。


その日の午後、ブライアウッド公爵邸の門前に、二台の馬車が乗りつけた。一台は、リンドバーグ家の紋章を掲げた馬車。そしてもう一台は、王家の紋章を掲げた、格式高い馬車だった。


馬車から降り立ったのは、白髪に蓄えられた髭をたくわえたバルドリック・リンドバーグと、その傍らに立つ、穏やかな笑みを浮かべた老紳士。その老紳士こそが、この国の「先代の王陛下」その人だった。


ブライアウッド公爵邸の執事は、王家の紋章と、バルドリック・リンドバーグ、そして何よりも先代の王陛下の突然の訪問に、驚愕のあまり、その場に立ち尽くした。


「コンラート・ブライアウッド公爵と、イザベラ公爵夫人に、面会を願う」


バルドリックの声は、静かでありながらも、有無を言わせぬ威厳を帯びていた。


ブライアウッド公爵コンラートとイザベラ公爵夫人は、応接室に現れた先代の王陛下とバルドリックの姿に、驚きと、そして深い困惑を隠せない。彼らは、まさか王室の最高権力者の一人である先代の王陛下が、バルドリックと共に、こんな形で公爵邸に乗り込んでくるとは、夢にも思っていなかったのだ。


「陛下!バルドリック様!このような突然のご訪問、一体何事でございますか!」


コンラート公爵は、恭しく頭を下げながらも、その声には、わずかな動揺が混じっていた。


先代の王陛下は、穏やかな笑みを浮かべながらも、その瞳の奥には、王族としての揺るぎない威厳が宿っていた。


「コンラート。久しぶりだな。今日は、バルドリック殿と共に、貴殿に伝えたいことがあってな」


そして、バルドリックが、静かに、しかし威厳を持って口を開いた。


「コンラート公爵。貴殿の娘君、セリーナ殿が、我が孫娘セレスティに対し行った行為について、王族の裁定は下された。しかし、その裁定の背後には、貴殿の家門が、我がリンドバーグ家、ひいては王家に対し、不満を抱いているという風聞も耳にしておる」


バルドリックの言葉は、まるで雷鳴のように、ブライアウッド公爵邸の応接室に響き渡った。彼の言葉は、公爵家が水面下で企てていたであろう報復の動きを、全て見透かしているかのようだった。


「陛下と私は、かつて幾多の戦場を共に駆け抜けた。無茶ばかりもしたものだが、互いに命を預け、王国の未来を信じて戦った。その中で、卑劣な私怨や、無用な軋轢は、常に王国の害となることを知っている」


先代の王陛下が、バルドリックの言葉を補足するように語りかけた。その言葉には、かつての戦友との深い絆と、王国の平和を何よりも重んじる、王族としての強い意思が込められていた。


コンラート公爵とイザベラ公爵夫人は、先代の王陛下とバルドリックの、その圧倒的な威厳と、古き友との絆を前に、言葉を失った。彼らは、リンドバーグ家との対立が、王家全体を巻き込む事態に発展する可能性を、まざまざと見せつけられたのだ。


ブライアウッド公爵家が企てていたであろう報復の計画は、この二人の老紳士の突然の訪問によって、その芽を摘み取られることになった。アリアの「王国放送」が、王国の未来を築く希望の光である一方で、その背後では、王国の古き守護者たちが、陰ながらその未来を守り続けていたのである

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