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公爵家の衝撃、揺れる矜持

貴族院からセリーナ・ブライアウッドへの一年間の停学処分が言い渡され、王都の貴族社会に大きな衝撃が走った。特に、公爵家であるブライアウッド家にとっては、この処分は家門の誇りと名誉を深く傷つけるものだった。


ブライアウッド公爵邸では、当主のコンラート・ブライアウッドと、妻のイザベラ・ブライアウッドが、ユリウス王子からの裁定が記された王宮からの通達を前に、凍り付いていた。


「な……なんですって!?セリーナが、停学処分……!?しかも、一年間、王都追放だと!?」


イザベラ公爵夫人は、信じられないといった様子で、悲鳴のような声を上げた。彼女の顔は、怒りと屈辱で紅潮している。愛する娘が、これほど厳しい処分を受けるとは、夢にも思っていなかったのだ。


「公爵令嬢たるセリーナが、このような恥辱を受けるとは……!王子の裁定とはいえ、看過できるものではない!」


イザベラ公爵夫人の目には、涙が浮かんでいたが、それは悲しみではなく、娘への同情と、リンドバーグ家への激しい怒りによるものだった。


コンラート公爵は、妻の感情的な反応とは異なり、沈黙のまま、通達書の内容を何度も読み返していた。彼の顔は、普段と変わらず冷静沈着だが、その瞳の奥には、深い怒りと、そして事態の背後にある「何か」を探ろうとする冷徹な光が宿っていた。


「リンドバーグ……。やはり、あの家が関わっているのか」


コンラート公爵の言葉は、氷のように冷たかった。彼は、娘がセレスティ・リンドバーグに嫉妬し、嫌がらせをしていたことは薄々気づいていたが、それが王子の介入を招き、これほどの事態に発展するとは予想していなかったのだ。


「殿下は、セレスティ・リンドバーグを庇ったのですわ!あの娘が、セリーナを陥れたに違いありません!卑劣なリンドバーグ家め……!」


イザベラ公爵夫人は、感情的に叫んだ。彼女は、娘の非を認めず、全ての責任をリンドバーグ家、特にセレスティに押し付けようとした。


コンラート公爵は、静かに妻の言葉を遮った。


「落ち着け、イザベラ。感情的になっても何も解決しない。王子の裁定は、既に下されたものだ。これを覆すことは不可能だ」


しかし、彼の言葉は、諦めや受容ではない。むしろ、この事態の背後にあるものを冷静に分析し、今後の対応を画策しようとする、冷徹な思考の表れだった。


「リンドバーグ家……。アリア・リンドバーグの『王国放送』が王国の情報網を牛耳り、フローラ王女殿下の信頼を得て。そして、セレスティ・リンドバーグが貴族院で首席を取り、ユリウス殿下の関心を引く。まるで、あの家が、この王国の権力の中枢に入り込もうとしているかのようだ」


コンラート公爵は、リンドバーグ家の急速な台頭に、警戒心を抱いていた。特に、アリアの「王国放送」が持つ情報伝達の力は、彼のような情報統制を重視する貴族にとっては、脅威以外の何物でもない。


「セリーナの処分は、確かに重い。しかし、このことで、リンドバーグ家が王家からの信頼をさらに厚くしたことは間違いない。我々ブライアウッド家としては、この状況を座視するわけにはいかないな」


コンラート公爵の瞳の奥には、リンドバーグ家への深い不満と、家門の地位と名誉を守るためならば、どんな手段も厭わないという、冷徹な決意が宿っていた。


イザベラ公爵夫人は、夫の言葉を聞き、静かに頷いた。彼女の目には、娘の仇を討つかのような、激しい敵意が宿っていた。


王子の公正な裁定は、ブライアウッド公爵家という名門貴族の誇りを深く傷つけ、リンドバーグ家への根深い怨恨を生み出した。アリアの「王国放送」が、身分を越えて人々を繋ぐ希望の光である一方で、貴族社会の深い闇の中では、古くからの権力闘争と、新たな愛憎の物語が、静かに、しかし確実に、その幕を開けようとしていたのである。

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