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喧騒の中の異変、妹の直感

アリアは、ライナー先生との研究に没頭し、夜の放送を終えた後は、地下の休憩スペースで心身を休めるという生活を送っていた。貴族院の公式な授業や行事にはほとんど顔を出さず、学内での人間関係にも疎かった。そのため、セレスティがセリーナ・ブライアウッドから受けている嫌がらせのことなど、全く知る由もなかった。アリアの頭の中は、常に「王国放送」の未来と、新たな魔法理論の構築でいっぱいだったからだ。


ある日の午後、アリアは、ライナー先生に頼まれた資料を受け取るために、珍しく貴族院の本館へと向かっていた。ポルンを肩に乗せ、廊下を歩いていると、遠くから何やら騒がしい人だかりが見えた。生徒たちがざわめき、視線を一点に集中させている。


(何かあったのかな……?)


アリアは、好奇心に誘われるように、その人だかりに近づいていった。そこには、レオ兄様が、普段の冷静さを失い、何かを強い口調で訴えている姿が見えた。そして、その向かいには、冷たい笑みを浮かべたセリーナ・ブライアウッドが、レオ兄様を侮蔑するような視線で見つめている。レオ兄様の顔は、怒りと、そして深い屈辱感で赤くなっていた。


「……身の程を弁えなさい」


セリーナ・ブライアウッドの、氷のように冷たい言葉が、アリアの耳にも届いた。その言葉の響きは、アリアの心に、嫌な予感を抱かせた。


レオ兄様とセリーナ・ブライアウッド。二人の間に、何があったのだろうか。アリアは、その状況を理解できずに戸惑っていた。


人だかりが、二人の間に割って入るようにざわめき、やがて騒ぎは収まった。セリーナ・ブライアウッドは、勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。レオ兄様は、悔しさに顔を歪ませながら、うなだれるように立ち尽くしていた。


そして、その場に残された人だかりの隅で、アリアは、見慣れた金色の髪を見つけた。セレスティ姉様だ。


セレスティは、顔を俯かせ、その肩は小さく震えていた。普段の凛とした姿とはかけ離れた、傷つき、打ちひしがれたようなセレスティ姉様の姿に、アリアの心臓が、ドクンと大きく鳴った。


(お姉様……!)


アリアは、すぐにセレスティの異変を察した。彼女の「声聞魔法」は、周囲の感情の微細な揺らぎを敏感に感じ取る。セレスティ姉様の心からは、深い悲しみと、そして言葉にできないほどの屈辱感と、無力感が伝わってきた。それは、アリアがかつて「落ちこぼれ」と蔑まれていた頃に感じていた感情と、酷似していた。


アリアは、人だかりをかき分けて、セレスティの元へと駆け寄った。


「お姉様!どうしたのですか、お姉様!」


アリアの声に、セレスティは、ゆっくりと顔を上げた。その青い瞳には、涙が浮かんでいた。セレスティは、アリアの顔を見ると、その目に、安堵と、そして救いを求めるかのような光を宿した。


レオ兄様も、アリアの突然の出現に驚き、顔を上げた。彼の顔には、悔しさと、そしてアリアにこの光景を見られたことへの、恥ずかしさが入り混じっていた。


アリアは、セレスティの手を強く握った。彼女の「声聞魔法」は、セレスティの心の奥底にある傷を、はっきりと感じ取っていた。

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