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剣の交わり、王子の秘めたる心

貴族院では、レオ・リンドバーグが、いつものように訓練場で剣術の鍛錬に励んでいた。彼の剣技は、学年トップクラスの評価を受けていたが、レオ自身は、常に更なる高みを目指していた。


そんなレオの訓練場に、不意に現れたのは、王国の第一王子、ユリウス・ロゼッタ・ラングフォードだった。ユリウスは、レオより一つ上の学年で、剣術においても魔法においても卓越した才能を持つ、貴族院の模範生だった。


「レオ・リンドバーグ殿。今日の訓練も、見事なものだったな」


ユリウス王子の声は、常に冷静で、その表情には、感情を読み取らせない王族特有の威厳が漂っていた。レオは、王子の突然の訪問に驚き、恭しく頭を下げた。


「ユリウス殿下。ご視察、恐縮いたします」


「いや、構わん。貴君の剣術は、学内でも群を抜いている。もしよければ、このユリウスが、少しばかり貴君の相手を務めても良いか?」


ユリウス王子の言葉に、レオは驚きに目を見開いた。王族が、一貴族の生徒に直接剣術を指導するなど、前代未聞のことだ。しかし、レオは、この機会を逃す手はないと直感した。


「はっ!光栄の極みにございます!」


レオは、力強く応え、剣を構えた。ユリウス王子も、静かに剣を抜き、構えを取る。


二人の剣が交わると、訓練場には、金属がぶつかり合う鋭い音が響き渡った。ユリウス王子の剣は、流れるように滑らかでありながら、重く、そして正確だった。レオは、王子の攻撃を辛うじて受け止めていたが、その技量には、圧倒されるばかりだった。


訓練の合間、ユリウス王子は、レオに的確な助言を与えた。


「貴君の剣は、力強い。しかし、時に、その力が、相手の動きを読むことを妨げている。力を抜くべき場所と、集中すべき場所を見極めるのだ」


ユリウス王子の言葉は、レオにとって、まさに目から鱗だった。彼は、王子の指導を受け、自分の剣術に新たな光が差し込むのを感じた。


訓練が終わり、二人は汗を拭きながら、訓練場の片隅で休んでいた。その時、ユリウス王子は、何気ない口調でレオに尋ねた。


「そういえば、レオ・リンドバーグ殿。貴君の妹君、セレスティ殿は、最近どうしている?」


ユリウス王子の突然の問いかけに、レオは少し戸惑った。王子が、セレスティのことを尋ねてくるとは、予想していなかったからだ。


「セレスティは、貴族院の癒しの魔法の授業で、相変わらず優秀な成績を収めております。先日も、難解な魔法陣の構造について、教授陣から高い評価を受けていました」


レオは、妹の活躍を誇らしげに語った。


ユリウス王子は、その言葉を聞き、静かに頷いた。彼の脳裏には、療養室で癒しの魔法を使うセレスティの真摯な姿が鮮明に蘇っていた。その優しさと、揺るぎない心の強さ。アリアの魔法が、生命の根源に触れる力ならば、セレスティの癒しの魔法は、その生命を育む温かい光のようだった。


(彼女の魔法は……本当に、心を安らかにする力を持っている……)


ユリウス王子の心臓が、再び静かに、しかし確かに鼓動した。それは、王族としての理性や、国の未来への重責とは異なる、個人的な感情の揺らぎだった。セレスティの才能と人柄に惹かれる気持ちが、彼の心の中で、日に日に募っていくのを感じていた。


「そうか……。彼女の才能は、王国にとって、かけがえのないものとなるだろう」


ユリウス王子は、そう言うと、空を見上げた。彼の心の中には、王国の未来と、そしてセレスティへの秘めたる感情が、複雑に交錯していた。

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