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妖精の残像、貴族院の新たな伝説

アリアが「特別研究科生」として貴族院に入学してから三年目。レオは騎士の専門課程で卓越した成績を収め、セレスティも癒しの魔法の分野でその名を轟かせ、共に貴族院の顔となっていた。彼らは、常に多くの後輩たちに囲まれ、その指導や相談に乗ることも多かった。


「レオ先輩!今日の模擬戦も、見事な剣さばきでした!僕もいつか、先輩のように強く……!」


「セレスティ先輩!あの難解な魔法陣の解説、とても分かりやすかったです!私も、先輩のように、繊細な魔力制御ができるようになりたいです!」


レオの周りには、剣術や攻撃魔法に憧れる男子生徒たちが集まり、セレスティの周りには、癒しの魔法を志す女子生徒たちが集まっていた。彼らは、リンドバーグ兄妹の才能と人柄に深く魅了され、尊敬の眼差しを向けていた。


しかし、そんな彼らの会話の中で、しばしば「ある話題」が持ち上がることがあった。


「そういえば、レオ先輩の妹君、アリア・リンドバーグ様も、貴族院に在籍していらっしゃるんですよね?」


ある下級生が、恐る恐るレオに尋ねた。


「ええ、アリアは特別研究科生としてな。私よりも、よほど忙しいようだ」


レオは、以前のような不機嫌な顔ではなく、どこか誇らしげな表情で答えた。アリアの功績と才能を認めて以来、妹の話題を振られることに、抵抗を感じなくなっていた。


「やはり!先輩も、アリア様の噂はご存じなのですね!」


別の下級生が、興奮気味にセレスティに話しかけた。


「貴族院では、最近、リンドバーグ家には『森の妖精』がいるという伝説が広まっているんです!なんでも、その妖精は、貴族院の中庭に無数の小鳥たちを集めて、まるで歌い踊らせたとか……!」


セレスティの友人たちも、その伝説が学内で広まっていることを知っていた。エレノア・クロフォードは、笑顔でアリアの功績を称賛し、ベアトリス・ハートフィールドは、その神秘的な現象に学術的な興味を示していた。


しかし、下級生たちの多くは、アリアの顔を見たことがなかった。アリアが貴族院の公式な場に姿を現すことがほとんどなかったため、彼らにとってアリアは、顔のない「伝説の少女」となっていたのだ。


「僕たち、一度もアリア様にお会いしたことがないんです。本当に、貴族院に在籍していらっしゃるのでしょうか?」


「きっと、その『森の妖精』というのは、アリア様のことなのですね!姿を見せない神秘的な存在だからこそ、伝説として語り継がれているのだわ!」


下級生たちの間では、アリアの存在は、既に実在の人物というより、貴族院に伝わる「森の妖精」の伝説として、半ば神格化されていた。彼女の容姿や人柄を知る者はおらず、ただ、その神秘的な力と、小鳥たちを集める幻想的な光景だけが、語り継がれているのだ。


レオは、後輩たちの言葉を聞きながら、静かに目を閉じた。彼の脳裏には、黒髪と真っ赤な瞳を持つ、控えめな妹の姿が浮かんだ。彼女は、表舞台に立つことを好まず、いつも陰で、ひっそりと、しかし確かな情熱を燃やしていた。その妹が、今や貴族院の「伝説」として語られている。その事実に、レオは、深く感慨を覚えた。


セレスティもまた、下級生たちの言葉に耳を傾けながら、微笑んでいた。アリアは、自分の姿が見えなくても、その「声」と、その「魔法」がもたらす影響は、確実に王国全体に広がり、人々の心に深く刻み込まれている。そして、それが貴族院に、新たな「伝説」を生み出している。その事実に、セレスティは、妹への深い誇りと、温かい愛情を感じていた。


貴族院の廊下で、三兄妹は久々に顔を合わせた。レオとセレスティは、後輩たちからの噂話について、アリアに話した。アリアは、自分が「森の妖精」として語られていることに、少し戸惑いながらも、嬉しそうに微笑んだ。


「私が、妖精さん……ですか?」


アリアの言葉に、レオとセレスティは、優しく頷いた。


「ああ。お前は、この貴族院にとって、そして王国にとって、かけがえのない『妖精』だ」


レオの言葉には、以前のような傲慢さはなく、妹への深い理解と、温かい愛情が込められていた。

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