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静かなる進展、貴族院の歳月

アリア・リンドバーグが「特別研究科生」として貴族院に入学してから、二年の歳月が流れていた。この間、アリアは、貴族院の公式な授業や行事に顔を出すことはほとんどなかった。彼女の活動の場は、貴族院の宿舎にある「放送局」と、ライナー先生との研究室、そして早朝のアリアネットワークとの情報交換に明け暮れる地下の休憩スペースが中心だった。


世間には、フローラ王女との友情や、王宮の危機を救った「森の精霊に愛された少女」という噂が広まっているものの、アリア自身が公の場に姿を現すことは滅多になかった。彼女は、持ち前の内気な性格もあって、表舞台に立つことを好まず、自身の「声聞魔法」の研究と、「王国放送」の運営に、ひたすら情熱を注ぎ込んでいた。


しかし、アリアが表舞台に出てこない間に、彼女の「王国放送」は、ますますその影響力を拡大させていた。王国全土に設置された魔力波塔と中継局は、完璧な情報網を構築し、国民の生活に欠かせないインフラとなっていた。放送者たちも、それぞれの個性を活かし、多種多様な番組を国民に届け、多くの人々の心を掴んでいた。


『王国モーニングニュース&天気予報』は、毎日の生活の指針となり、『夕焼け物語』は、フローラ王女の声と共に国民の心を癒し、王族への親近感を育んだ。宣伝放送は、王国の経済を活性化させ、多くの商店や工房に新たな繁栄をもたらした。アリアネットワークを通じて集められる情報は、王国の危機管理能力を飛躍的に向上させ、各地での災害や魔物騒動の被害を最小限に食い止めていた。


アリア自身も、ライナー先生との研究を通じて、飛躍的な進歩を遂げていた。階層構造魔力回路のさらなる効率化、響鳴石の共鳴特性の深層解明、そして「思念の伝達」という、アリア自身の魔法の本質に関する考察は、貴族院の魔法理論を大きく更新する可能性を秘めていた。彼女の黒板には、新たな理論と、未来の魔導具の設計図が、びっしりと書き込まれていた。


そんなある日、ライナー先生が、アリアに報告書を手渡した。


「アリア様。貴族院の学籍記録によりますと、貴女様は、本日より『3年生』に昇級いたしました」


ライナー先生の言葉に、アリアは、驚きに目を見開いた。


「えっ?私が、もう3年生ですか?」


アリアは、自身の学籍のことなど、ほとんど気に留めていなかった。彼女の頭の中は、常に「王国放送」と、魔法の研究でいっぱいだったからだ。貴族院の授業にはほとんど出席していないものの、ライナー先生との個別指導と、その成果が認められ、正式に学年が上がっていたのだ。


ライナー先生は、優しく微笑んだ。


「ええ、アリア様。貴女の学術的な貢献は、貴族院の教授陣の間でも高く評価されています。特に、貴女の研究成果は、既に貴族院の最上級生レベルを遥かに超越しており、その資質は、王国の魔法界の未来を担うものと、皆が認めております」


アリアは、自分の知らない間に、これほどまでに評価されていたことに、少し戸惑いながらも、心からの喜びを感じていた。かつて「落ちこぼれ」と蔑まれていた自分が、今や貴族院の3年生として、その才能を認められている。その事実に、アリアの胸は温かい光で満たされた。


アリアは、ライナー先生から受け取った報告書を、そっと撫でた。表舞台には出てこなくても、彼女の「声」と「知」は、着実に王国全体に影響を与え、そして、静かに、しかし確実に、その名を歴史に刻み始めていたのである。貴族院の3年生となったアリアは、これからも、自身の「王国放送」を通じて、世界に新たな希望の音色を響かせ続けていくことだろう。

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