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女王の秘密、執務室の「安息」

フローラ王女の自室で「秘密の隠れ家スペース」を体験した女王陛下は、その快適さと、外界から完全に遮断された静寂に、深く魅了されていた。王宮の最高権力者として、常に重責を担い、決して休まることのない日々を送る女王にとって、あの空間がもたらす安堵感は、何物にも代えがたいものだった。


(フローラは、この場所で休息を取ることで、あれほどまでに活力を得ていたのね……)


女王は、娘の体調が回復し、公務にも意欲的になっている理由を、その身をもって実感した。王宮の厳格な規則の中で、心身を休めることの難しさ。そして、アリアの「声聞魔法」が、王女の心に新たな安息をもたらしたこと。


女王は、自分もまた、そのような場所を必要としていると悟った。常に冷静沈着で、感情を表に出さない女王だが、その心の奥底では、絶え間ない重圧に晒されていた。


しかし、女王が自らの執務室に、王女と同じような隠れ家スペースを作ることは、容易なことではない。王宮の改築は厳重な手続きが必要であり、何よりも、王国の最高権力者である女王が、個人的な「休息」のために、このような空間を設けることは、周囲に弱みを見せることにも繋がりかねなかった。


(バレないように……。誰にも気づかれずに、この安息の場所を……)


女王は、秘かに、王宮に仕える最も信頼のおける職人頭を執務室に呼び出した。


「お前に、極秘の任務を命じる。わしの執務室の一角に、隠し部屋を造ってほしい」


女王の言葉に、職人頭は驚きに目を見開いたが、女王の厳命とあっては、逆らうことはできない。


女王は、自ら設計図を描き、職人頭に指示を出した。隠し部屋は、執務室の壁の一部をくり抜き、木の壁で仕切られた2畳ほどの空間とする。地下の休憩スペースと同じく、電球色の照明魔術具と、特製のリクライニングシート、小さなテーブルを設置する。そして、最も重要なのは、その存在を完璧に隠すことだった。


職人たちは、女王の指示に従い、細心の注意を払いながら作業を進めた。隠し部屋の入口は、執務室の壁に描かれた大きな絵画の裏に設けられ、開閉時には全く音が出ないように魔力を使った機構が組み込まれた。外壁は、執務室の豪華な内装と完全に一体化するよう、精巧な装飾が施された。遠目には、そこに隠し部屋があるとは、誰にも気づかれないだろう。


数日後、女王の執務室に、秘密の隠れ家スペースが完成した。女王は、職人頭をねぎらい、その存在を誰にも話さないよう厳命した。


夜遅く、一日の公務を終えた女王は、執務室の壁の絵画をそっと動かし、隠し部屋へと足を踏み入れた。電球色の優しい光が、女王を包み込む。リクライニングシートに身を沈めると、外界の喧騒が完全に遮断され、完璧な静寂が訪れた。


(この安堵感……フローラの言っていた通りだわ)


女王は、目を閉じ、深く息をついた。王宮の重責から解放され、心ゆくまで自分自身と向き合えるこの空間は、女王にとって、何よりも貴重な場所だった。アリアの「王国放送」が、娘の心にもたらした変化。それが、今、自分自身の心にも、深い安息をもたらしている。


女王の執務室に生まれた「秘密の安息」。それは、アリアの「声聞魔法」と、その発想が、王宮の最高権力者の日常にまで、静かに、しかし確実に変化をもたらしていることを象徴していた。そして、王国の未来を背負う女王は、この秘密の場所で、アリアの「希望の音色」に耳を傾け、新たな英断を下すことになるだろう。

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