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王女の安息、地下の楽園に魅せられて

女王陛下の許可を得て、フローラ王女が放送局の地下休憩スペースで一晩過ごすことになった、その日。王都の空が夕焼けに染まり始める頃、王女はいつものように『夕焼け物語』の放送室へと向かった。その日の放送は、いつも以上に心を込めた物語を国民に届けた。国民に寄り添いたいという王女の願いと、地下の安息への期待が、その声に一層の深みを与えていた。


放送を終えたフローラ王女は、放送局のスタッフから受け取った、その日のリスナーからのお便りの束を手に、心臓を高鳴らせながら地下へと続く階段を降りていった。ライナー先生とアリア、そして少数の護衛騎士たちが、地下の通路で王女を待っていた。


「フローラ王女殿下。ようこそ、地下の休憩スペースへ。今夜は、どうぞごゆっくりとお過ごしください」


ライナー先生が優しく出迎えると、フローラ王女は、緊張しながらも期待に満ちた表情で頷いた。アリアは、王女の個室へと案内した。


個室の扉を開けたフローラ王女は、その中に広がる光景に、驚きと感嘆の声を上げた。薄暗い電球色の照明、体にフィットするリクライニングシート、小さなテーブルと手元用照明、そしてブランケットとふかふかの毛布。そこは、王宮の豪華な自室とは異なる、しかし最高の安らぎをもたらす空間だった。


「まあ……!これは、本当に素晴らしいですわ!」


フローラ王女は、リクライニングシートに身を沈めた。外界の喧騒が嘘のように遮断され、光も音も届かない、完璧な静寂。王宮の厳格な規則の中で、常に他者の視線に晒されてきた王女にとって、これほどのプライベートな空間は、生まれて初めての体験だった。


アリアは、王女の個室の隣に、自身も休息のために移動してきた。


「王女殿下。この部屋は、私の魔法とも相性が良いみたいで、とても心が落ち着くんです。きっと、王女殿下も、ぐっすり眠れると思います」


アリアが優しく語りかけると、フローラ王女は、目を閉じて深く息を吸い込んだ。身体の奥底から力が抜けていくような、深い安堵感に包まれる。


フローラ王女は、手元に置かれたリスナーからのお便りの束に、そっと手を伸ばした。昼間の放送では、その声しか聞けない国民から、どんな言葉が届いているのだろうか。一つ一つ、丁寧に読み進めていく。そこには、王女の語る物語に感動したという感謝の言葉、日々の生活の報告、そして小さな悩みなどが綴られていた。


「この方、私の物語を聞いて、勇気をもらってくださったのね……」


フローラ王女は、国民の生の声を、肌で感じていた。王宮では知ることのできなかった、国民一人ひとりの暮らしと心。アリアの「放送」は、王女と国民の心を、こんなにも強く繋いでいる。その事実に、王女の心は、温かい喜びと、そして王族としての新たな使命感で満たされた。


読み疲れると、フローラ王女はリクライニングシートを倒し、ふかふかの毛布にくるまった。完璧な静寂の中で、王女は、これまで経験したことのないほど深い眠りへと落ちていった。夢の中では、アリアの優しい歌声と、小鳥たちのさえずりが聞こえる。


翌朝、目覚めたフローラ王女は、心身ともに驚くほど爽快だった。王宮の自室で目覚める時とは、全く違う清々しさだ。まるで、一日の疲れが全て洗い流されたかのようだった。


「アリア様……この場所は、本当に素晴らしいですわ……!わたくし、昨夜は、生まれて初めて、こんなにも深く眠ることができましたわ」


フローラ王女は、個室から出てきたアリアに、目を輝かせながら語りかけた。


アリアは、王女が心身ともに癒されたことに、心から喜びを感じていた。


ライナー先生は、王女の晴れやかな表情を見て、深く頷いた。彼は、この地下の休憩スペースが、単なる休息の場ではなく、王女自身の心に、新たな安息と活力を与える場所となったことを確信した。


王女の一夜限りの「地下の安息」は、彼女の心に忘れられないほどの快適さをもたらした。

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