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王女の願い、地下の安息への憧れ

アリアの「王国放送」は、王国の隅々にまで希望の音色を届け、多くの国民の生活に欠かせないものとなっていた。フローラ王女もまた、『夕焼け物語』の放送者として国民に声を届ける喜びを感じ、アリアとの友情を深めていた。


貴族院での授業や、王族としての公務の合間を縫って、フローラ王女はしばしばアリアの研究室(兼放送局)を訪れていた。そこでは、多くの放送者や研究者たちが熱心に活動し、王宮の厳格な雰囲気とは異なる、活気と自由な空気が満ち溢れていた。


ある日の午後、フローラ王女は、ライナー先生との打ち合わせを終えたアリアに話しかけた。


「アリア様。貴女様は、午後の休息時間は、いつも地下の休憩スペースで過ごされていると伺いましたわね。そして、夜の放送後も、そのままそこに……」


フローラ王女は、少し羨ましそうな眼差しでアアリアを見つめた。アリアの「休息時間」の延長は、王宮にも知らされていたが、彼女がそこで寝泊まりしていることは、ライナー先生から伝えられていた。


「はい、王女殿下。あの場所は、とても静かで、心が落ち着くんです。私の魔法とも、相性が良いみたいで……」


アリアは、地下の休憩スペースが、自分にとってどれほど大切な場所であるかを説明した。


フローラ王女は、その話を聞きながら、王宮での自身の生活を思い浮かべた。王宮の自室は豪華絢爛で、何不自由ない生活を送れる。しかし、常に侍女や護衛の目が光り、何をするにも王族としての規則に縛られる。心ゆくまで一人になれる時間など、ほとんどなかった。


(アリア様のように、光も音も届かない場所で、心ゆくまで休息し、自分の好きなことに没頭できるなんて……!)


フローラ王女は、アリアの自由な生活と、その安息の場所に、強い憧れを抱いた。アリアが、そこで自身の魔法と深く向き合い、新たな知見を得ていることも、彼女の知的好奇心を刺激した。


その日の夕食後、フローラ王女は、女王陛下の執務室を訪れた。女王は、娘の顔に、いつもとは異なる決意の表情が浮かんでいることに気づいた。


「フローラ。どうしました?何か、悩み事でもあるのですか?」


女王が優しく尋ねると、フローラ王女は、少し躊躇しながらも、意を決して口を開いた。


「お母様。わたくし、お願いがございますの。アリア様のように……わたくしも、放送局の休憩スペースで、寝泊まりしたいのです!」


フローラ王女の言葉に、女王は驚きに目を見開いた。


「フローラ!何を言っているのですか!王女たる者が、王宮を離れて、そのような場所で寝泊まりするなど、前代未聞です!」


女王の声には、厳しさが込められていた。王女が王宮を離れるなど、警備上も、貴族としての体裁上も、決して許されることではない。


しかし、フローラ王女は、一歩も引かなかった。


「お母様。アリア様は、あの場所で、心身を休め、そして自身の魔法と深く向き合っていらっしゃいます。わたくしも、アリア様のように、あの場所で、もっと深く学び、国民の皆様に、より良い物語を届けたいのです!」


フローラ王女の目には、アリアへの友情と、放送への情熱、そして、王族としての義務感だけでなく、自らの意思で学び、成長したいという、強い願いが宿っていた。


「アリア様は、あの場所で、夜の放送後も、リスナーからの便りに目を通し、国民の皆様の悩みに寄り添っていらっしゃると聞きました。わたくしも、王族として、国民の皆様の心に、もっと深く寄り添いたいのです!」


フローラ王女の言葉は、女王の心に深く響いた。彼女は、娘が、単なるわがままからではなく、王族としての使命感と、アリアとの友情を通じて、新たな成長を遂げようとしていることを理解した。


女王は、静かに目を閉じ、深く考え込んだ。王女が王宮を離れることのリスクは大きい。しかし、娘のこの純粋な願いを、むやみに否定することもできない。

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