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地下の主、魔女の安息と探求

ライナー先生が丹精込めて作り上げた地下の休息スペースは、アリアにとって、まさに「聖域」となった。外界の光も音も完全に遮断されたその空間は、常に情報に敏感なアリアの心を深く安らげ、多忙を極める彼女の心身を癒す、かけがえのない場所となった。


アリアは、ライナー先生の厳命もあり、午後の「アリア様の休息時間」(午後1時から午後7時まで)を、ほぼ毎日、その地下の休息スペースで過ごすようになった。


午後1時になると、アリアはポルンを肩に乗せ、地下へと続く階段を降りていく。自分の個室の扉を開け、リクライニングシートに身を沈めると、アリアはすぐに深い眠りに落ちた。地上の喧騒も、研究室の賑やかさも、ここでは一切届かない。数時間の深い眠りは、アリアの疲労を驚くほど回復させ、彼女の魔力と精神力を満たしていった。


しかし、アリアはただ眠っているだけではなかった。深い休息から目覚めた後も、アリアはそのまま個室に居座り、手元に用意された小型黒板とラジオ受信機を使って、様々な活動を行っていた。


ラジオ受信機からは、他の放送者たちが担当する『希望の架け橋、悩み相談室』や『科学と魔法の時間』などが流れてくる。アリアは、それをBGMのように聞きながら、小型黒板に、新たな放送のアイデアや、ライナー先生との研究で閃いた魔力回路の改良案などを書き込んでいった。


(フレデリックさんの『王国ランチタイム』、各地の特産品の紹介がとても分かりやすいわ。今度、リスナーからのレシピ募集を企画してみようかな……)


(イリスさんの『魔導具の秘密』、響鳴石の共鳴周波数に関する解説、もっと分かりやすく伝えるにはどうしたらいいかしら……)


アリアは、個室の静寂の中で、放送全体を俯瞰し、自身の魔法の可能性を深く探求することができた。外界からの刺激がないため、アリアの思考は研ぎ澄まされ、新たなアイデアが次々と湧き上がってくる。ポルンも、アリアの膝の上で、心地よさそうに丸くなり、静かに彼女を見守っていた。


他の放送者たちも、アリアが地下の休息スペースに居座っていることを知っていた。最初は心配していたが、アリアが休息時間後に、いつも以上に精力的に放送や研究に取り組んでいる姿を見て、皆、その効果を実感していた。


「アリア様は、あの地下の休息スペースに入ると、まるで別人のように活力が漲るようだ。まさに『魔女の隠れ家』だな」


ロジャーが、感嘆の声を上げた。


ライナー先生も、アリアが休息時間を有効活用していることに満足していた。アリアの体調は格段に改善され、その集中力と発想力は、以前にも増して鋭くなっていたからだ。


「アリア様は、あの場所で、心身を休めるだけでなく、自身の『声聞魔法』と深く向き合い、新たな知見を得ているのでしょう。地下の静寂が、彼女の才能をさらに開花させている」


ライナー先生は、そう言って、優しく微笑んだ。


アリアは、午後7時になると、地下の安息の場所から、再び地上へと姿を現す。その顔には、深い休息と、新たな発見への喜びに満ちた輝きが宿っていた。地下の休憩スペースは、アリアの「王国放送」を支える、かけがえのない拠点となっていた。それは、アリアという一人の少女の才能が、王国全体を動かす大きな力となっても、彼女自身の心の奥底にある「静寂と探求」の場所を、常に大切にしていることを象徴していたのである。

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