賢者の配慮、魔女の長い休息
放送局は、ライナー先生の後輩たちも加わり、各番組が順調に稼働。王国全土に響き渡るアリアの「希望の音色」は、国民の生活に深く根差し、多くの人々から愛されていた。
しかし、その成功の裏で、ライナー先生は、アリアの過酷なスケジュールに、改めて深く心を痛めていた。朝4時からのアリアネットワーク統括、午前7時のニュース解説、そして夜の『眠れぬ夜に、君に寄り添う声』の担当。日中の研究や打ち合わせも加わり、アリアの睡眠時間は、深夜から早朝にかけてのわずかな時間と、午後1時からの2時間に限られていた。
(これでは、あまりにも過酷すぎる……。彼女の才能を長く維持するためには、十分な休息が不可欠だ)
ライナー先生は、深夜、放送局の誰もいなくなった部屋で、アリアのスケジュール表を見つめながら、深く考え込んでいた。彼自身も研究に没頭するあまり、休息を疎かにしがちだったが、アアリアは、この王国の未来を担うかけがえのない存在だ。彼女の健康を何よりも優先すべきだと、ライナー先生は強く感じていた。
翌日の午後、アリアの授業中、ライナー先生は、黒板に書き出された放送スケジュールを指さしながら、アリアに問いかけた。
「アリア様。貴女は、この『王国放送』の心臓であり、その中心で王国全体を支えていらっしゃいます。貴女の情熱と努力には、感謝の念が尽きません。しかし、貴女の休息時間について、再考の必要がございます」
ライナー先生の真剣な言葉に、アリアは少し驚いたように顔を上げた。
「先生、私は大丈夫です。みんなが、とても協力してくださいますから」
アリアは、自分の体調を心配させないように、明るく振る舞った。
しかし、ライナー先生は静かに首を振った。
「アリア様。貴女は、早朝からのアリアネットワーク統括という、極めて重要な役割を担っています。その上で、深夜まで放送に携わるというのは、あまりにも負担が大きすぎます。疲労が蓄積すれば、いずれ貴女の魔法にも影響が出かねません」
ライナー先生は、そう言うと、黒板の放送スケジュールに、新たな変更を加えた。
「午後1時00分~午後7時00分:【アリア様の休息時間】
内容: 睡眠、あるいは静養。この時間は、アリア様は一切の業務から離れ、心身を休めることとする」
「アリア様。午後1時からの休息時間を、午後7時まで延長しましょう。これにより、貴女様は、昼食後から夕食までの間、まとまった休息を取ることができます。これにより、十分な睡眠と静養を確保し、貴女様の心身の負担を大幅に軽減できるはずです」
ライナー先生の提案に、アリアは、驚きに目を見開いた。午後1時から午後7時まで。それは、これまでの2時間の休息時間を大幅に超える、6時間もの休息時間だ。
「そんなに……!でも、そうしたら、私が担当している番組はどうなるのですか?他の皆さんに、ご迷惑をおかけしてしまうのではないですか?」
アリアは、自分よりも、他の放送者たちへの負担を心配した。
ライナー先生は、優しく微笑んだ。
「ご心配なさる必要はありません、アリア様。他の放送者たちも、貴女の体調を気遣っています。そして、貴女の『王国放送』が、より長く、より強く、王国全体に響き続けるためならば、喜んで協力してくれるでしょう。この時間帯の番組は、他の放送者たちが交代で担当し、アリア様の代役を務めます」
ライナー先生は、そう言うと、少し申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「アリア様。このような昼夜逆転のような生活を強いてしまい、本当に申し訳ありません。貴女の才能を最大限に活かすためには、早朝からのアリアネットワークの統括が不可欠です。しかし、その分、日中の休息を十分に取っていただかなければなりません」
ライナー先生の心からの気遣いに、アリアは胸がいっぱいになった。自分の体調を、こんなにも心配し、支えてくれる人がいる。その温かさに、アリアの心は深く感動した。
「先生……ありがとうございます。私、このお時間、しっかりと休ませていただきます。そして、もっと、良い『王国放送』を届けられるように、頑張ります」
アリアは、力強く頷いた。
こうして、アリアの「王国放送」のスケジュールに、大幅に延長された「魔女の長い休息時間」が加えられた。それは、アリアの才能が、王国全体を動かす大きな力となっても、彼女自身が、人間として、心身共に健やかであることを、ライナー先生が何よりも大切にしていたことの証だった。アリアの「希望の音色」は、十分な休息を得て、さらに力強く、王国全体へと響き渡っていくことになるだろう




