王国の羅針盤、広がる世界の眼差し
王国記念祭の二日目、国王陛下は、各国からの要人たちとの公式会談に臨んでいた。会談室には、隣国の侯爵、将軍、そして複数の外交官たちが、国王陛下の前に座していた。彼らの表情には、昨夜の晩餐会と今朝の「王国放送」で受けた衝撃が、未だ色濃く残っていた。
「国王陛下。この度は、王国記念祭にご招待いただき、誠にありがとうございます。貴国が誇る『王国放送』という情報伝達の仕組みには、我々一同、深く感銘を受けました」
隣国の侯爵が、恭しく頭を下げ、会談の切り口として「王国放送」の話題に触れた。彼の言葉には、形式的な挨拶以上の、真剣な関心が込められていることが、国王陛下には伝わった。
「侯爵殿下。お褒めの言葉、光栄にございます。この『王国放送』は、国民の生活向上と、王国の安全保障を目的として、我々が総力を挙げて推進しているプロジェクトでございます」
国王陛下は、穏やかながらも、誇らしげに答えた。
すると、隣国の将軍が、前のめりになるように口を開いた。
「国王陛下。恐縮ながら、我々はこの『王国放送』の、特に魔物情報や国境周辺の動向に関する情報伝達の迅速性に、多大な関心を抱いております。我が国では、情報伝達の遅れが、しばしば国境防衛の遅れに繋がり、甚大な被害をもたらしておりますゆえ……」
将軍の言葉は、彼らの国が抱える深刻な問題を示していた。彼らにとって、アリアの「王国放送」は、まさに喉から手が出るほど欲しい技術だった。
別の外交官も、言葉を続けた。
「我々も、貴国の『王国放送』が、経済活動や国民の教育にまで影響を与えていることに、深く驚いております。この画期的な情報伝達の仕組みについて、是非とも詳しくお教えいただきたく存じます」
要人たちは、アリアの「王国放送」が、単なる珍しい魔法の産物ではなく、国家運営の根幹を揺るがすほどの、計り知れない価値を持つものであることを理解していた。彼らは、自国の未来のために、この技術を導入したいと、強く願っていたのだ。
国王陛下は、要人たちの真剣な眼差しを静かに見渡した。彼は、アリアの「王国放送」が、やがて世界全体に影響を与えるであろうことを、既に予見していた。
「諸君らの関心、理解いたしました。この『王国放送』は、リンドバーグ家のアリア・リンドバーグ嬢が、その天賦の才によって開発した『声聞魔法』と『魔力波塔』の技術を基盤としております」
国王陛下は、アリアの名前を挙げ、彼女がこの技術の生みの親であることを明かした。要人たちは、それが「森の精霊に愛された少女」として噂されている、あの少女の功績であることを知り、改めて驚きを隠せない。
「貴国のこの情報伝達の仕組みは、まさに王国の『羅針盤』と言えましょう。この技術について、貴国と協力関係を築くことは可能でございますか?」
隣国の侯爵が、真剣な眼差しで国王陛下に問いかけた。彼らの言葉には、王国との技術協力、ひいては外交関係の深化を求める意図が明確に込められていた。
国王陛下は、穏やかに、しかし威厳を持って答えた。
「そのことについては、前向きに検討いたしましょう。この『王国放送』の技術は、王国の繁栄だけでなく、世界の平和にも貢献しうるものだと、私も信じております。しかし、その運用には、細心の注意と、倫理的な配慮が不可欠でございます。ライナー・グレンジャー教授を始めとする、我が国の学術顧問と、貴国の専門家との間で、まずは詳細な協議を進めるべきだと考えます」
国王陛下の言葉は、王国の技術を独占するのではなく、世界の平和と繁栄のために貢献しようとする、高潔な意思を示していた。それは、アリアの「声聞魔法」が持つ、純粋な願いと、深く共鳴するものであった。
この会談は、アリアの「王国放送」が、王国という枠を完全に超え、国際社会においてもその真価を問われる、新たな局面へと突入したことを意味していた。アリアの「声」は、世界の国々へと、情報革命の始まりを告げるだけでなく、国際関係の新たな形をも築き始めることになるだろう。




