記念祭の響き、王国を巡る「声」の驚き
「王国放送」が開始されてからしばらくして。アリアの「希望の音色」は、王国全土に深く浸透し、国民の生活に欠かせないものとなっていた。魔力波塔と中継局は王国中に広がり、各地の受信機からは、朝から夜中まで、様々な「声」が届けられていた。
そんな中、王国にとって最も重要な行事の一つである「王国記念祭」が、盛大に執り行われることになった。王国記念祭には、周辺諸国の要人や、外交使節団が多数招かれ、王都は一年で最も華やかな賑わいを見せる。
王宮の広間では、国王陛下主催の盛大な晩餐会が開かれていた。各国からの要人たちが、豪華な衣装を身につけ、グラスを片手に談笑している。その場には、レオとセレスティもリンドバーグ家の代表として出席しており、アリアもライナー先生と共に、王宮からの招待を受けて参列していた。フローラ王女は、王族の一員として、各国要人の接待に当たっていた。
晩餐会の会場は、華やかな会話と、宮廷楽団の優雅な音楽で満たされていた。しかし、その賑わいの中に、これまでにはなかった、ある「音」が常に響き渡っていることに、各国からの要人たちは、戸惑いを隠せないでいた。
会場の隅々、そして王宮の廊下や控室、さらには庭園の休憩所にも、小さな木箱型の受信機が設置されており、そこからは常に、アリアの「王国放送」が流れていたのだ。
「……本日午後八時現在の王国各地のニュースをお伝えいたします。東の辺境で目撃された魔物の群れは、王宮騎士団の活躍により、全て駆除されました。国民の皆様には、引き続き警戒をお願いいたします……」
エルミア・ラッセルとグレタ・ストーンの落ち着いた声が、静かに、しかし確実に、王宮の隅々にまで届けられている。緊急のニュースが入れば、すぐに切り替わり、最新の情報が流れる。そして、時には穏やかな音楽や、ベアトリスの心温まる物語が流れ、人々の心を和ませる。
他国の要人たちは、その光景に驚きを隠せない。彼らの国では、情報伝達といえば、伝令の魔法使いによる伝達か、あるいは伝書鳩のような原始的な方法しかなかったからだ。しかも、特定の個人ではなく、不特定多数に、これほど詳細な情報を、常に流し続けている。
「これは……!一体、この不思議な箱からは、何の音が聞こえてくるのだ?」
ある隣国の侯爵が、驚きに目を見開いて、王宮の執事に尋ねた。
「これは、我が国の『王国放送』でございます、侯爵殿下。王国のあらゆる情報を、国民の皆様にお届けする、画期的な情報伝達システムでございます」
執事が、誇らしげに説明した。
「まさか……常に情報が流れているというのか!?しかも、これほど詳細に……!」
要人たちは、目の前の光景が信じられないといった様子だった。彼らは、リンドバーグ家のアリアが開発した「魔力波塔」と「放送」という技術が、王国の情報化を飛躍的に進展させていることを、この王国記念祭で初めて目の当たりにしたのだ。
国王陛下は、各国要人たちの驚きの表情を見て、満足げに微笑んだ。彼の隣に立つ女王陛下も、誇らしげな眼差しで、会場の隅にいるアリアに視線を向けた。
アリアは、その喧騒の中で、フローラ王女と共に談笑していた。フローラ王女は、他国の要人たちがアリアの「王国放送」に驚いている様子を見て、嬉しそうにアリアに語りかけた。
「アリア様。貴女様の『放送』は、こんなにも遠くの国の方々まで、驚かせているのですね!本当に、素晴らしいですわ!」
アリアは、王女の言葉に、少し照れながらも、心からの喜びを感じていた。自分の「声」が、王国全体だけでなく、他国の要人たちまで驚かせている。それは、彼女の魔法が、国境を越え、世界中に影響を与える可能性を秘めていることを示唆していた。
「去年までは、こんな不思議な音は聞こえなかった。我が王国も、この技術を導入すべきだろう」
他国の要人たちの間では、アリアの「王国放送」がもたらす情報化の進展が、大きな話題となり、自国への導入を検討する声が上がり始めた。
王国記念祭は、アリアの「王国放送」が、その真価を世界に示し、王国の新たな時代を告げる、歴史的な舞台となった。




