王国を巡る声のサイクル、放送の鼓動
王国全土を網羅する魔力波塔が稼働し、中継馬車も完成。そして、30名近くもの熱意ある放送者たちが育った今、アリアの「王国放送」は、その活動を本格的に拡大させる時を迎えていた。ライナー先生と共に、アリアは、朝から夜中までの詳細な放送スケジュールと、放送者たちのシフトを組む作業に没頭した。
「アリア様。これだけの放送者候補生がいれば、朝の七時から夜の十二時まで、様々なコンテンツを国民に届けることが可能になりますね」
ライナー先生は、黒板に書き込まれた、ぎっしりとした放送スケジュールを見上げながら、満足げに頷いた。
アリアは、かつて自分が提案した「声のダイヤグラム」を、さらに細分化し、多種多様な番組を考案していった。
午前7時~8時:『王国モーニングニュース&天気予報』
アリアネットワークから得られた最新情報を中心に、その日の天気や国内外の重要ニュースを伝える。
午前8時~10時:『朝の活力!健康情報』
薬草学に詳しい者や、元傭兵の経験を活かした身体の鍛え方など、健康に役立つ情報を紹介。
午前10時~12時:『王都の窓』
王都の文化、流行、新しいお店の紹介など、城下町の活気を伝える。
午後12時~1時:『王国ランチタイム』
各地の特産品、珍しい食材の紹介、簡単なレシピなど、食に関する情報。
午後1時~3時:『古の囁き、民の歌』
古文書研究者による歴史物語の朗読、各地の民謡の紹介など、文化的な放送。
午後3時~5時:『希望の架け橋、悩み相談室(仮)』
リスナーからの手紙を読み、温かい励ましや、解決策のヒントを提案する。
午後5時~7時:『夕焼け物語』
心を落ち着かせるような物語の朗読や、優しい歌。
午後7時~9時:『王国の声、今日の一日』
その日の王国の主要ニュースのまとめや、明日の展望。
午後9時~12時:『夜の静寂、夢への誘い』
安らかな眠りを誘う子守唄や、静かで心温まるおとぎ話の朗読。
各放送者には、それぞれの得意分野や個性を活かせるよう、一人一時間枠が割り振られた。もちろん、無理なく放送を続けられるよう、週に数日の休日も設けられていた。元書記官の女性は『王都の窓』や『王国の声』のニュース担当として、貴族の三男は『朝の活力!健康情報』で自身の経験を交えながら、老婦人は『夜の静寂、夢への誘い』で、その温かい声で子供たちを夢の世界へ誘う。
しかし、その中で、一人だけ、例外の存在がいた。アリア・リンドバーグだ。
「アリア様。貴女は、『王国モーニングニュース&天気予報』の統括と、アリアネットワーク全体の管理がありますので、基本的に休みはありません」
ライナー先生の言葉に、アリアは力強く頷いた。
「はい、先生。大丈夫です!私が、みんなから集めた大切な情報を、王国中の人に届けたいから!」
アリアは、アリアネットワークを統括する「リーダー」としての自覚と、王国全体の「放送」を支える責任を、強く感じていた。早朝の鳥たちからの情報収集から始まり、各省庁への情報伝達、そして日中の放送内容の最終確認。アリアの活動は、まさに「王国放送」の心臓部だった。
ライナー先生は、アリアの献身的な姿に、改めて深く感銘を受けていた。彼女は、もはや「落ちこぼれ」ではない。王国全体の情報インフラを支え、人々の心を繋ぐ「放送の始祖」として、その類まれなる才能と情熱を、王国のために捧げようとしていた




