声を探す人々、放送局への門
アリアの「王国放送」は、その有能な情報提供と、心を癒す歌や物語で、国民の間に確固たる地位を築き始めていた。特に、ゴードンの酒場の広告が成功を収めて以来、「放送」が持つ経済効果も注目され、王国の新たな文化として浸透しつつあった。
しかし、アリア一人の魔力と体力では、24時間放送し続けることは不可能だ。そこで、ライナー先生の助言もあり、アリアは「放送者候補者」を募集することにした。彼女が前世の記憶で知る「ラジオ」のように、多くの人々が「声」を届け、さらに多くの人々がそれに耳を傾ける、そんな未来を夢見ていたからだ。
募集が開始されると、貴族院の掲示板や、王都の城下町に設けられた情報板には、連日、その募集要項が張り出された。
「王国放送では、国民の皆様に、より多様な情報と希望の音色をお届けするため、新たな『放送者』を募集いたします。貴族、平民問わず、王国を愛し、その声で人々を繋ぎたいと願う方。特に、朗読や歌唱、情報収集に長けた方を歓迎いたします」
その呼びかけは、王国中に大きな反響を呼んだ。
数日後、貴族院の一室に設けられた面接会場には、ライナー先生も驚くほどの数の人々が集まっていた。その数、実に30名近く。老若男女、様々な身分や境遇の人々が、それぞれの思いを胸に、アリアの「放送者候補者」に応募してきたのだ。
面接官は、アリア、ライナー先生、そして研究室の主要メンバーであるロジャー、エディス、フェリックス、リリーが務めた。アリアは、目の前に座る人々一人ひとりの顔を、真剣な眼差しで見つめた。
まず、面接室に入ってきたのは、上品な身なりをした一人の女性だった。彼女は、元は貴族の家柄に生まれたが、結婚を機に仕事をやめ、その後、再就職がうまくいかずに悩んでいたという。
「私は、かつて王都の宮廷で、書記官を務めておりました。しかし、結婚後、家庭に入り……その後、再就職の機会に恵まれず、社会から取り残されたような気持ちでおりました。しかし、アリア様の『王国放送』を聞いて、私の声で、また誰かの役に立てるかもしれないと……そう、強く感じたのです」
彼女の声は、かつて宮廷で培われた教養を感じさせる、美しく澄んだ響きを持っていた。
次に面接室に入ってきたのは、貴族の三男だという若者だった。長男は家を継ぎ、次男は騎士団に入隊し、自分は特にこれといった才能もなく、貴族院での学びも中途半端に終わってしまい、自分の居場所を見つけられずにいたという。
「私は、これまで自分の居場所を見つけられずにいました。しかし、アリア様の『王国放送』を聞いて、私の声で、王国の民に希望を届けたいと、強く思うようになりました。どうか、私にもその機会をください!」
彼の声には、強い情熱と、自らの居場所を見つけたいという、切なる願いが込められていた。
他にも、病気で体を壊し、力仕事ができなくなった元傭兵。子供たちに物語を語り聞かせるのが得意な老婦人。各地の旅で、珍しい民謡を覚えた吟遊詩人崩れの若者。皆、アリアの「王国放送」に、自分自身の可能性と、新たな居場所を見出そうとしていた。
アリアは、面接に訪れる人々一人ひとりの言葉に、真剣に耳を傾けた。彼らの声には、それぞれの人生の物語と、未来への希望が込められている。そして、その全てが、自分の「放送」に、かけがえのない彩りを与えてくれるだろうと感じた。
「アリア様……貴女の『放送』は、人々の心を繋ぐだけでなく、彼らに新たな居場所と希望を与えているのですね」
ライナー先生は、面接の様子を見守りながら、アリアにそう語りかけた。彼の瞳には、アリアの才能がもたらす、社会への深い影響に、改めて感嘆の色が浮かんでいた。




