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賢者の悩み、魔女の閃き

アリアの研究室が、王国初の「放送局」としての活動を開始し、ライナー先生の後輩たちも加わって、研究は日々活気を帯びていた。魔力波塔の建設は着々と進み、王国全土への「放送」実現が目前に迫る中、彼らの情熱は尽きることがなかった。


しかし、ライナー先生は、その活気の裏で、一つの深刻な問題に一人で頭を悩ませていた。それは、「予算」だ。


王宮からのプロジェクト予算は、魔力波塔や中継局の建築、受信機の量産といった大規模な設備投資には十分だったが、急増した研究員たちの生活費や、日々の研究活動に必要な細かな資材の費用までは、十分に賄えるものではなかった。ライナー先生は、貴族院の教授としての自身の給料を切り詰めるなど、個人的な努力もしていたが、それも限界があった。


(これほど優秀な若者たちが、アリア様の研究に心血を注いでくれている。この情熱を、予算不足で潰すわけにはいかない……!)


深夜、誰もいなくなった研究室で、ライナー先生は、書類の山に頭を抱えていた。彼の知的な顔には、疲労と、そして解決策を見つけられない焦燥感が浮かんでいた。彼は、アリアの天才的な発想と、若者たちの情熱を、何としても守りたかった。


翌日の午後、アリアはライナー先生との授業中、いつになく沈んだ表情をしている先生の様子に気づいた。


「先生、何か、悩み事でもございますか?」


アリアが心配そうに尋ねると、ライナー先生は、無理に笑顔を作り、首を振った。


「いえ、アリア様。貴女が心配なさることはありません。些細なことです」


しかし、アリアの「声聞魔法」は、ライナー先生の心の声の奥に、深く沈んだ不安を感じ取っていた。それは、「予算」という言葉と、それに伴う「研究員たちの生活」という重い響きだった。


(予算……研究員さんの生活費……)


アリアは、ポルンを撫でながら、考え込んだ。前世の記憶が、再び彼女の脳裏に蘇る。ラジオ放送を運営するためには、お金が必要だった。そのお金を、どこから得ていたのか……。


「あの……先生。私、一つ、提案なのですが」


アリアは、おずおずと口を開いた。ライナー先生は、アリアの声に、少し驚いたように顔を上げた。


「私の『放送』には、朝のニュースや、お昼の情報放送、夕方の物語と歌、という時間がありますよね?」


アリアは、黒板に書かれた放送時間割を指さしながら、続けた。


「もし、その放送の途中に、少しだけ、誰かの『宣伝』を挟むのは、どうでしょうか?」


アリアの言葉に、ライナー先生は目を丸くした。「宣伝」という概念は、この世界の「情報伝達の魔法」には存在しなかったからだ。


「宣伝、ですか?それは、一体……」


ライナー先生が、戸惑ったように尋ねると、アリアは、前世の記憶を頼りに、その仕組みを説明した。


「例えば、王都の新しいパン屋さんとか、珍しい果物を売っているお店とか……。そういうお店が、自分たちの商品やお店のことを、私の放送で、少しだけ紹介してもらうんです。その代わり、宣伝してもらったお店からは、私たちに『宣伝費』として、お金をいただくのはどうでしょうか?」


アリアは、黒板に、「人気の時間帯で30秒の宣伝であれば、〇〇ルクス(この世界の通貨単位)いただく」といった具体的な費用体系を書き始めた。


ライナー先生は、アリアの提案に、驚愕のあまり言葉を失った。彼の知的な顔には、感嘆と、そして新たな可能性への興奮が入り混じった表情が浮かんでいた。


「宣伝……費用……!まさか、そのような発想が、情報伝達の魔法に応用できるとは……!」


ライナー先生は、アリアの発想が、単なる予算不足の解決策に留まらず、王国全体の経済活動を活性化させる、新たなビジネスモデルを構築する可能性を秘めていることに気づいた。それは、王国の『放送』が、国民の生活に深く根差す、新たな文化を創造することをも意味していた。


「アリア様……貴女の才覚には、ただただ感服するばかりです。この発想は、王国の財政に新たな道を開き、我々の研究を、持続可能なものに変えるでしょう!」


ライナー先生は、そう言うと、アリアが書き出した費用体系のメモを手に、興奮気味に立ち上がった。彼の顔からは、昨夜までの疲労と不安は完全に消え去り、新たな探求への喜びが満ち溢れていた。


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