広がる「声」の拠点、放送局の胎動
「アリア様!私も、ぜひ貴女様の研究に参加させてください!」
「私もです!魔力回路の最適化において、貢献できることがきっとあります!」
ライナー先生の後輩である若手研究者たちが、アリアの研究室に次々と協力を申し出る声が響き渡った。アリアの部屋は、一瞬にして熱気と興奮に包まれた。普段は静かな研究室が、まるで貴族院の講堂のように賑やかになっている。
アリアは、部屋いっぱいに集まった人々の多さに、ただただ唖然としていた。彼女の視界は、知的好奇心に満ちた若者たちの顔で埋め尽くされている。彼らの熱意は、アリアの予想をはるかに超えるものだった。
「これって……先生。もう、研究所っていうよりも……」
アリアは、思わずライナー先生に視線を向けた。
「放送局、なのでは……?」
アリアの呟きに、ライナー先生は、満面の笑顔で頷いた。
「ええ、アリア様。貴女の『王国放送』は、もはや一研究室の枠には収まりません。まさに、王国全体の『放送局』として、その役割を担おうとしているのです!」
ライナー先生の言葉に、アリアは、自分の魔法がここまで大きなものになるとは、夢にも思っていなかったため、感動と、そして新たな使命感に胸がいっぱいになった。
しかし、集まった人々の熱意は素晴らしいものの、彼らをどのように配置し、協力してもらうかは、アリア一人では手に負えない。ライナー先生が、その役割を果たすべく、動き出した。
「皆、静粛に!アリア様の『王国放送』が、この貴族院の、そして王国の未来を築く重要なプロジェクトであることは、私も異論ございません。しかし、この研究室の空間には限界があります。秩序だった協力体制を築く必要があります」
ライナー先生は、そう言うと、黒板に向かい、チョークを手に、集まった研究者たちの割り振り図を書き始めた。アリアも、ポルンと共に、ライナー先生の隣に立ち、彼らの専門分野や興味関心を聞きながら、割り振りの手伝いをした。
「まず、ロジャー君とフェリックス君は、魔力波塔のさらなる改良と、魔力回路の最適化に力を貸してほしい。王国の全域をカバーするためには、より安定した魔力伝送技術が不可欠だ」
ライナー先生が指示すると、ロジャーとフェリックスは、力強く頷いた。
「エディス君とリリー君は、アリア様と共に、鳥たちから得られる情報の整理と分析に尽力してほしい。特に、古文書に記された知識と、アリア様の情報との関連性については、エディス君の専門性が不可欠だ」
エディスとリリーも、真剣な表情で頷いた。
そして、ライナー先生は、新たに集まった若手研究者たちに視線を向けた。
「そして、新たに加わってくれた諸君には、まずはアリア様の『声聞魔法』と、その原理について深く学んでもらいたい。特に、以前セレスティ様が、アリア様の送信機を起動できたように、適性のある者がいれば、貴族院の教育課程を越えた、新たな『放送者』となる可能性も秘めている」
ライナー先生の言葉に、アリアはハッとした。セレスティが、自分の送信機で歌声を届けられたあの日のこと。その時は、姉の魔力特性が自分の魔法と相性が良いのだと思っていたが、もし、それが他の人にも応用できるのであれば……。
「そうか!もし、私以外にも、適性のある人がたくさんいれば、朝から晩まで、色々な『放送』を届けることができるようになるかもしれない!」
アリアは、その可能性に目を輝かせた。自分一人では限られた時間しか放送できないが、複数の「放送者」がいれば、王国全体に、より多様なコンテンツを、長時間届けられるようになる。それは、アリアが前世で愛した「ラジオ」の姿に、より近づくことを意味していた。
ライナー先生は、アリアのアイデアに、満足げに頷いた。
「その通りです、アリア様。貴女の魔法は、可能性の宝庫です。皆で協力し、その可能性を最大限に引き出していきましょう」
こうして、アリアの研究室は、王国初の「放送局」としての本格的な活動を開始した。アリアの「声」は、単なる情報伝達の手段に留まらず、多くの才能と情熱を引き寄せ、王国全体の未来を築くための、壮大な物語を紡ぎ始めたのである。




