声が繋ぐ奇跡、新たな生命の誕生
魔力波塔の承認から10ヶ月ちょっと経ち、アリアの「王国放送」が開始されてから、わずか10日後のことだった。王国全土に響き渡るアリアの「希望の音色」は、人々の生活に確かな変化をもたらし、リンドバーグ家の人々もまた、再び聞けるようになったアリアの生の声に、日々喜びを感じていた。
その日の朝、リンドバーグ家は、普段とは異なる緊張感と期待に包まれていた。エリザベスの出産予定日が間近に迫っていたのだ。アレクサンダーは、落ち着かない様子で書斎と寝室を行き来し、マリアを始めとする使用人たちも、皆、そわそわとした表情でエリザベスの安否を気遣っていた。
王都の貴族院で学ぶアリアにも、その日の朝、実家から急ぎの伝令が届いていた。ライナー先生が、アリアと共に、リンドバーグ家へと急ぎ馬車を走らせた。アリアは、お母様の無事と、新しい弟か妹との出会いを願い、胸を高鳴らせていた。
そして、午後も半ばに差し掛かった頃、リンドバーグ家の寝室から、小さな、しかし力強い産声が響き渡った。
「おぎゃあ、おぎゃあ!」
その声は、屋敷中の緊張を解き放ち、一瞬にして歓喜へと変えた。
「生まれたわ!男の子よ!」
老女医の声が響くと、アレクサンダーは、感動のあまり、その場に崩れ落ちそうになった。彼の手は、感動に震えている。
「エリザベス!ありがとう、エリザベス……!」
アレクサンダーは、涙ぐみながら、愛する妻の手を握りしめた。エリザベスもまた、疲労困憊の表情の中に、新しい命を授かった喜びと、深い安堵が満ち溢れていた。彼女の腕の中には、真新しい産着に包まれた、小さな、小さな命が抱かれている。
その知らせは、すぐに屋敷中に伝えられた。マリアは、目に涙を浮かべながら、天に感謝を捧げた。グレゴリオは、厨房で「めでてぇな!」と叫び、エミーリアは、喜びのあまり、他のメイドたちと抱き合って飛び跳ねた。リンドバーグ家は、まさに祝福の嵐に包まれていた。
程なくして、王都から急ぎ駆けつけたアリアとライナー先生も、その喜ばしい知らせを聞き、安堵のため息をついた。
「お母様!無事だったのですね!赤ちゃんは……赤ちゃんは男の子なのですか!?」
アリアは、興奮冷めやらぬ様子で、駆け寄ってきたアレクサンダーに尋ねた。
「ああ、アリア。元気な男の子だ!そなたに、弟ができたぞ!」
アレクサンダーは、満面の笑顔でアリアを抱きしめた。彼の目には、喜びの涙が光っていた。
アリアは、その言葉に感動し、目に大粒の涙を浮かべた。自分に、また弟ができた。この小さな命に、自分の「放送」で、たくさんの物語と歌を届けられる。その想像に、アリアの心は温かい光で満たされた。
ライナー先生も、その喜ばしい光景に、優しく微笑んでいた。アリアの「王国放送」の開始からわずか10日。この時期に新たな命が誕生するという偶然は、まるでアリアの「声」が、王国の未来を築く希望であると同時に、リンドバーグ家自身の未来をも祝福しているかのようだった。
この日、リンドバーグ家には、新たな命の喜びが満ち溢れた。アリアの「王国放送」が、王国全体に「希望の音色」を響かせ始める中で、その「始祖」であるアリア自身の家族にも、かけがえのない喜びと、そして未来への新たな光が灯されたのである。弟は、アルバスと名付けられることになる。




