届ける「声」の恩恵、受信機の配布計画
アリアネットワークが王国を駆け巡る生きた情報網として確立され、魔力波塔の建築も最終段階に入っていた。アリアの「放送」が、いよいよ本格的に王国全土へと届けられる日が目前に迫っている。それに伴い、王国中に「ラジオ受信機」を普及させる計画も、具体的に検討される時期となっていた。
ある日の午後、ライナー先生は、貴族院の宿舎にあるアリアの部屋で、受信機の量産計画に関する資料を広げていた。
「アリア様。魔力波塔が稼働すれば、貴女の『放送』は王国全土に届きます。しかし、それを聞くための受信機がなければ、その恩恵を国民が享受することはできません。そこで、この受信機の量産と配布について、王宮に提言する計画を立てています」
ライナー先生は、そう言って、大量生産に必要な資材や費用、そして工房の選定に関する資料をアリアに見せた。
アリアは、その資料をじっと見つめながら、何かを考えるように首を傾げた。そして、ゆっくりと口を開いた。
「先生。受信機は、たくさんの人に届けたいです。でも……誰もが、お金を出して買えるわけではないですよね?」
アリアの言葉に、ライナー先生は頷いた。確かに、王都の貴族や裕福な商人であれば購入可能だろうが、辺境の貧しい村人や、病に臥せっている人々にとって、受信機は高価なものとなるだろう。
「そこで、私は思うんです。この受信機を、本当に必要としている人たちに、無償で届けたいなって」
アリアの言葉に、ライナー先生は驚きに目を見開いた。無償での配布は、王国の財政に大きな負担をかけることになる。
「例えば、村の役場とか、病気で苦しんでいる人がいる病院とか……。そういう場所に、優先的に受信機を置いて、みんなで聞けるようにしたら、きっとたくさんの人が助かると思うんです」
アリアは、自分の「放送」が、最も困っている人々に届くことを願っていた。魔物の出現情報、災害の予兆、そして、病床で寂しい思いをしている人々に届ける温かい物語や歌。それらの情報は、命を救い、心を癒す力となる。
ライナー先生は、アリアの純粋な心と、その深く広い視点に感銘を受けた。彼女は、単なる技術の発明者としてだけでなく、その技術が社会にもたらす影響までを見据えている。
「アリア様……貴女の発想は、常に私の想像を超えます。しかし、貴女の提言は、王国の未来を築く上で、極めて重要な視点です。情報格差の是正、そして国民全体の福祉向上……これこそが、王国の公共インフラとして、『放送』が果たすべき役割なのかもしれません」
ライナー先生は、アリアの提案を、王宮に提言することを決意した。
「この計画は、王国の財政に大きな影響を与えますが、女王陛下も、アリア様の『放送』が持つ『心を癒す力』に深い価値を見出していらっしゃいます。きっと、この提言は、王宮でも真剣に検討されるでしょう」
ライナー先生は、そう言うと、早速、受信機の配布計画に、アリアの「優先的無償配布」という考え方を盛り込んだ資料を作成し始めた。




