暁の報せ、アリアの朝
アリアネットワーク」が組織されて以来、アリアの研究室は、王国全体の「空の情報司令部」として、さらに活気を帯びていた。魔力波塔の建設も最終段階に入り、アリアの「放送」が王国全土に届けられる日は、もう目の前まで迫っていた。
そんなある朝、アリアは、まだ夜明け前の薄暗い時間帯に、ポルンの小さな鳴き声で目を覚ました。アリアの肩に止まっているポルンは、どこか興奮した様子で、小さく羽ばたいていた。
(アリア、早く起きて!みんなが、もう情報を集めてきている!)
ポルンの心の声に、アリアは驚いて跳ね起きた。時計に目をやると、まだ午前四時を少し過ぎたばかりだった。普段、アリアが起床するよりもはるかに早い時間だ。
「えっ……もう?みんな、そんなに早くから……?」
アリアは、寝ぼけ眼をこすりながら、部屋の窓を開けた。すると、窓の外には、まだ夜の闇が残る空の下、カラスの群れが旋回し、数羽のフクロウたちが、窓枠に止まっているのが見えた。彼らの目には、既に一日の情報収集を終えてきたかのような、達成感が宿っている。
(ウィンドだ!東の森で、夜中に珍しい光が見えたって言ってる!)
(セージも、北の山脈で、雪解け水が増えているって!)
ポルンが、次々とフクロウたちからの情報をアリアに伝える。カラスたちも、窓の外で、王都の城下町の夜明け前の様子や、商人たちの動きについて、けたたましく鳴きながら報告している。
アリアは、その情報量の多さと、何よりも彼らがこんなにも早くから活動していることに、驚きを隠せない。
「みんな……こんなに早くから、ありがとう!本当に、助かるわ!」
アリアは、急いで黒板に向かい、チョークを手に、報告された情報を書き込んでいった。夜中に起こった出来事、夜明け前の王都の状況、そして各地の天気に関する最新情報。黒板は、あっという間に、多種多様な情報で埋め尽くされていく。
ライナー先生も、早朝のアリアの部屋の賑やかさに気づき、顔を出した。
「アリア様、随分と朝早くから、情報収集に励んでいらっしゃるのですね」
ライナー先生は、黒板に書かれた最新情報を見て、感嘆の声を上げた。
「素晴らしい。これほど早い時間から、王国全土の情報を網羅できるとは。これならば、朝七時のニュース放送も、より正確で、タイムリーな情報を国民に届けることができるでしょう」
ライナー先生は、アリアネットワークの効率性と、鳥たちの献身性に、改めて深く感銘を受けていた。鳥たちは、アリアの「声聞魔法」を通じて、彼女が王国のために何をしようとしているのかを理解し、そのために、自らの習性を最大限に活かして協力してくれているのだ。
アリアは、早朝から集まってくる鳥たちを見上げ、心からの感謝を伝えた。
「みんな、本当にありがとう。この情報で、きっとたくさんの人が、助かるはずだから」
アリアの「放送」は、こうして、王国のまだ眠るような早朝の時間帯から、活動を開始する鳥たちの目と耳によって支えられていくことになった。王国全土に「希望の音色」を響かせ、国民の生活を豊かにする日。その朝の始まりは、鳥たちの献身的な情報収集と共に、静かに、しかし力強く刻まれていくのだった。




